高級ブランドも参戦!「表参道」不動産争奪の内幕 閉店中のオリエンタルバザーはフェンディに?

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実際、高級ブランドの関係者は皆、表参道の次のステージは高級ブランドでも最高峰にあるジュエリーである、と予想している。ある業界アナリストは、このトレンドを「Ginza-ification」(銀座化)と表現している。

表参道の銀座化、あるいは、高級ブランドがこぞって進出するきっかけを作ったのは、イタリアの衣料品ブランド、ベネトンだと原宿表参道欅会、商店街振興組合の理事長を務めた松井誠一氏は話す。

ベネトン氏自身は売却を渋っていた

1996年、イタリアの起業家ルチアーノ・ベネトン氏が、今もその地に建っている伊藤病院の隣の2区画の土地を購入。天才的な不動産投資家でもあったベネトン氏は、東京の不動産市場が大きく傷んでいた時期にこの土地を取得した。バブル崩壊後、表参道の不動産価格の「5分の4は吹き飛んでいた」(松井氏)にもかかわらず。

ベネトン氏の元アドバイザーによると、ベネトン氏が購入した土地の価格はその後高騰し、土地の売却を希望する家族と、この土地に愛着を感じていたベネトン氏の間で対立が深まった。

元アドバイザーは言う。「私がルチアーノに表参道の土地の売却を提案したことがあった。すると、ルチアーノは私の目を見据えてこう言った。『もう一度 そんな提案をしたら、ベネトンでのおまえの最後の言葉になるからな。私が生きている限り、絶対に売却しない』」。ベネトン氏の子供たちは土地売却を決めるのに、ベネトン氏が出席しない取締役会の機会を待つ必要があった。最後は同氏もしぶしぶ諦めたという。

売却の数カ月後に、ケリングのフランソワ=アンリ・ピノーCEOが、表参道のその土地を訪れた。172坪の土地に172億を出した男だ。それまでこの土地を実際に目にしたことはなかった。 訪問の現場に居合わせた人によると、ピノーは「思っていたより狭い」と、ポツリと述べたという。1996年から比較すると、表参道の坪単価は5倍に膨らんでいる。

ちなみに、ベネトンのケリングへの売却の裏ではあるスキャンダルが勃発していた。一連の交渉にかかわった人物によると、両社が合意に至るより前に、ベネトンは地元の不動産ファンドであるNTT都市開発にこの土地を売ることを約束していた。

NTT都市開発は買値を引き上げたが、ベネトンは結局ケリングに土地を売却。この品に欠けた行為の”被害”を受けたのはNTT都市開発だけではない。同社がベネトンと同じ価格で買い取ると合意していた土地の所有者だ。不幸なことに、ケリングはこの土地は買い取らず、ベネトンの土地だけを取得した。

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