ロヒンギャ113日海上漂流に映る難民支援の困難 81人の女性や子供がようやくたどり着いた場所

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インドネシア・アチェ州の島に漂着したロヒンギャ難民の女性や子供たち。コロナ禍で東南アジア諸国は門戸を閉ざしているため、正式な受け入れ先の決定が難航している(写真:Geutanyoe Foundation提供)

インドネシアのアチェに浮かぶ小さな島、イダマン島に、81人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の女性や子供たちを乗せた木製のボートが漂着した。このボートは、安住の地としてマレーシアを目指して旅立ったものの、のべ113日にわたって海上を漂流していた。

コロナ禍にあってマレーシアは国境を原則的に封鎖中、感染対策と経済的困難による資金不足を理由に難民に対する海上での取り締まりを強化している。バングラデシュからの航路の途中に漂着したインドからも受け入れを拒否された挙げ句、アチェにある離島にようやくたどり着いた格好だ。

支援団体を通じて、漂着したロヒンギャ難民の状況を聞き取り取材した。

インフラも食料もない小さな島なだけに、到着してまもないロヒンギャ難民の女性たちは、対岸のアチェ住民から提供された魚や野菜、米などボートで運ばれてきた食材をもとに自ら料理をして空腹を満たしているようだった。急遽設置された大きなテントに雑魚寝する状況で、ブランケットと地面を覆うマットのみが支給された。

しかし、医療などを受けられる状態は整っておらず、早急にイダマン島から移送される必要があるものの、行き先がなかなか決まらない状況だという。

PCR検査は81人全員が陰性、ワクチン接種も

感染者が増え続けるコロナ禍にあって、漂着した当日夜にロヒンギャ難民全員に対してPCR検査が即座に行われ、全員の陰性が確認されたほか、翌日には地元の看護師らによりワクチン接種までもが手配されたそうだ。ちなみに、ボートに乗っていた大半のロヒンギャが、すでに正式な難民認定済みのカードを保持する「難民」だ。

道中は過酷を極めた。ロヒンギャ難民たちがバングラデシュのコックスバザールにある難民キャンプをボートで旅立ったのは、さかのぼること今年2月11日。しかし、出航からわずか4日後に、ボートのエンジンが故障したためアンダマン海上で漂流、インドの沿岸警備隊により発見され、8人のロヒンギャが遺体で発見された。下痢や脱水症状などを起こして死亡したとみられている。

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