日本の「経済成長一辺倒」に致命的に欠けた視点

「SDGs」を声高に叫ぶ日本に欧州で覚える違和感

広井:日立製作所のAI(人工知能)を用いて、未来にどんなシナリオが広がるのかを予測する研究を2017年に発表しました。結論をいうと、地方分散型社会のほうが、パフォーマンスがいい。コロナ感染も集中型社会の危うさ、もろさが現れたと思うんですね。大都市圏、巨大都市でまず広がって、それがほかの地域にも広がっていく。

高松:なるほど、示唆的ですね。

広井:ヨーロッパの中でドイツのコロナへの対応を見ていると、相対的にパフォーマンスがいいのはドイツ。極端に巨大な都市というのが少なく、全体像としては、わりと小規模の都市や町、村が全国各地に広がっています。

高松:そうですね。人口10万人ともなれば「大規模都市」という位置づけです。

広井:言葉を換えると、多極集中ともいえる。極はたくさんあるけれども、それぞれの極はある程度集約的な、広場があって人が集まる、にぎわいのある場所がある。人口数千人から10万といった規模の小さな村、町でも中心地はにぎわっている。これも私にとってドイツの魅力です。

高松:そういう場所はたいてい都市の発祥地で、自治体の「ヘソ」です。大切にしています。

人口4万人の地方都市の地図。環状型の道に囲まれた部分は都市の発祥地。「自治体のヘソ」のような場所で大切にされている(筆者提供)

広井:それに対して、残念ながら今の日本は、20万以下の地方都市だと、間違いなくシャッター通りで空洞化しています。場合によっては50万程度の地方都市でもそうです。

「富国」の次の計画がなかった?

高松:日本がなぜ一極集中したかと考えると、富国強兵。戦後なら富国を目指したことが原因ではないでしょうか。

広井:そのとおりですね。

高松:戦後の国土開発を見ると、この地域は「稼ぐところ」、あの地域は「寝るところ=ベッドタウン」という具合に、日本全体、富国を目指して最適化をした。当時は正しい方法でしたが、その後のプログラムを考えてなかったように見えます。

広井:そうですね。

高松:「定常型社会」というのは、「開発期」を終えた後のプログラムづくりのビジョンだと理解しています。提唱されて約20年、手応えはどうですか?

広井:当初、賛成してくれる人もいましたけれど、何より経済成長だろうという意見が非常に強かった。

高松:想像はつきます。

広井:もう少し細かい話をすると、2000年代の後半頃、定常型社会的な流れが少し出てきたように思えました。しかし2012年に安倍政権になって「イケイケどんどん」の昭和的な発想がまた強くなった。私から見ると、あれは昭和の最後の灯火。「夢よ、もう一度」という感じを受けました。

高松:言い得て妙です。

広井:ジャパン・アズ・ナンバーワン的な発想の延長で、日本はいけるのではないかという雰囲気のなか、安倍政権が長く続いた。これで定常型社会というのはマイノリティーになりました。

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