日本だけでない欧州の「観光公害」残念な実態 ドイツから考える「ポスト平成型」ツーリズム
高度経済成長期の昭和「安・近・短」型の観光インフラが残る日本。その上で平成の最終段階で外国からの観光客が増加。京都や奈良、鎌倉などの観光地でオーバーツーリズム(観光公害)の問題がおこっている。観光資源を有効に使った経済活動は大切だが、観光地は決してテーマパークではない。本稿ではヨーロッパ、とくにドイツの各都市の状況や事例からオーバーツーリズムについて考察する。
ドイツでもじわじわ増えている
訪問客が特定の観光地に増加し、地域社会の生活の質や、環境などに影響を与える、オーバーツーリズムは日本だけの問題ではない。アムステルダム、バルセロナ、チロル(オーストリア西部からイタリア北部にわたるアルプスの地方名)、ベネチアなど、50年前から「観光地」である都市でオーバーツーリズムが問題になって久しい。
筆者が住むドイツでは、ミュンヘンやベルリンといった都市への訪問者は増加傾向にある。例えばベルリン-ブランデンブルク統計局によると、ベルリンへの観光客の数は1990年代とは「桁違い」だ。羅列してみると次のような増え方をしている。
2014年 約1190万人(外国からは38.1%)
2018年 約1350万人(外国からは45.9%)
オーバーツーリズム現象はじわじわと起こっている。
ドイツ南部バイエルン州のアルゴイ地方も同様だ。この地方は酪農で知られ、美しい山々のある牧歌的な雰囲気があるが、ツーリストが増加。
報道によると、同地方の自治体には駐車スペースの不足に悲鳴をあげているところもある。例えば、人口約1万人のオーバーストドルフでは、環境団体が日帰りの旅行者の駐車料金を極端に引き上げることを提案している。
こういう現状に呼応するかのように、観光客の多いところでは過ごしたくないと考えている人が4人に1人いる。また、特定の目玉になるような施設などへの訪問者制限に34%の人が同意しているという(同地方のケンプテン大学の観光マネジメントの調査)。
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