日本だけでない欧州の「観光公害」残念な実態 ドイツから考える「ポスト平成型」ツーリズム
近年、観光地としての変化が見え隠れするのがドイツ南部のバンベルクだ。
同市は、旧市街地に大聖堂などがあり、中世のたたずまいが色濃く残る町の1つだ。戦火を免れたこの町は1993年に世界文化遺産に登録された。報道によると、人口約7万8000人のこの町に、2017年の段階で9105回のガイドプログラムが行われた。
世界文化遺産に登録された1993年に比べて倍以上の増加だという。まさに「世界遺産」の効果といえる。同市は2億5000万ユーロ以上の観光収入があると推定。また約5000人がフルタイムで観光業に従事しているという。
この町は筆者も何度か仕事やプライベートで訪ねたことがあるが、個人的に変化を感じたのが2年前だ。駅で中年の男性が「コンニチハ」と日本語で親しげに話しかけてきたのだ。何かと思えばお土産品の販売だった。
土産屋さんが売っているものや売られ方を見ると、どういう観光地かが感覚的にわかるように思う。外国からの観光客をターゲットにしていると、いかにもキッチュなキーホルダーなどが並ぶ。
例えばパリに行けば、エッフェル塔のミニチュアなど自分で持てる範囲の商品を持って、観光客に販売する人がいる。バンベルクで筆者に声をかけてきたのはそういうお土産屋さんだった。静かな歴史的都市が、有名観光地のようになってきているように感じられた。
基本的には観光業は歓迎すべきもの
オーバーツーリズムは21世紀に入り世界各地の観光地で起こっている現象だ。
一方歴史を振り返ると、19世紀の鉄道の発達、20世紀に入ってからは自動車の普及、旅行会社などのサービスの拡充。こういった変化に伴って、大衆的な観光が膨らむ。
今世紀に入ってからは格安航空の登場、そして中国など、20世紀とは異なる国からの観光客が増加した。さらにSNSによる情報流通の拡大とAirbnb(エアビーアンドビー)といった民泊の増加。こういったことがオーバーツーリズムにつながっていると考えられている。
観光地は最低限の安全性があること、戦争などがない状態であることが前提条件だ。外国の観光地へ自国のパスポートでスムーズに行けるかどうかという国際関係も重要だろう。そういう意味では、観光業が成り立っているということは、基本的には歓迎すべきことなのだ。
しかし観光を取り巻く環境の変化が引き起こしたオーバーツーリズムは、ゴミや騒音など、観光地の「生活の質」を低下させ、さらには観光客にとっても「多すぎる観光客」の波の中を泳ぐ羽目になるわけだ。
チェコの首都プラハ(人口約130万人)も「オーバーツーリズム」が起こっている町だが、近年夜中にアルコールを楽しむ「アルコトリップ」の客が増加。その騒音などが問題化している。地下鉄の駅などには22時以降は静かにするよう、観光客向けに英語のポスターが貼られている。
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