日本の「経済成長一辺倒」に致命的に欠けた視点 「SDGs」を声高に叫ぶ日本に欧州で覚える違和感
日本のSDGsで致命的に欠けているもの
高松:人々にとって、生活の質が高く、持続可能な地方の「都市の発展」とはどうあるべきか。私はそういう部分に着目して、ドイツの地方都市を定点観測的に取材してきました。広井さんは以前から「定常型社会」という社会像を提唱されていますね。ドイツの都市とも関連があるのでしょうか?
広井:『定常型社会―新しい「豊かさ」の構想』という本を出したのが2001年、40歳のときでした。
高松:20年前になるんですね。
広井:定常型社会を言い換えれば成熟社会ということになるでしょうか。経済・環境・福祉、この3つのバランスが大事です。ドイツ・ヨーロッパは全体的に高いレベルでバランスを取っている。それに対して、日本はよくも悪くも経済一辺倒できました。
高松:このバランスは持続可能性の条件といえますが、興味深いのがSDGsです。ドイツで日常的にはほとんど聞きません。
広井:よくわかります。アメリカと比べても欧州のほうが社会保障も充実し、一定以上の平等が保たれ、環境も大事にしています。
高松:SDGsで掲げられているものは、もともと欧州で歴史的に積み重ねられたものと符合します。だから、「今さら感」もあるのだと思います。
広井:そうでしょうね。
高松:欧州での持続可能性価値の発展を見ると、中心にあるのは「人間の尊厳」。SDGsでもこれは重要な概念です。しかし日本での議論ではこの視点が致命的に欠けている。欧州で積み上がってきた価値観ですから、なかなか難しいのでしょうね。
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