駅周辺アクセスは「シェアサイクル」で改善できる 震災10年の津波被災地をたどる・福島相双編

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竜田から8時24分発に乗って5分で、この地方の中心地の1つ、富岡へ。ここの町内では一部の路線バスが運転を再開しており、駅前広場に待機しているバスもある。ところが、もともと海沿いをゆく路線は廃止し尽くされており、貴重な富岡車庫―堀込間の系統も原発事故に伴い、運休中だ。

富岡駅前に停車する富岡町内の路線バス(筆者撮影)

実は取材直後の4月1日のダイヤ改正で、富岡駅前―大野駅前―浪江駅前―FH2R間を結ぶ新常磐交通の路線バスが運転を始めていた。富岡駅前―FH2R間は4往復、浪江駅前―FH2R間にはさらに4往復が加わり、乗りやすそうだ。なお、FH2Rとは「福島水素エネルギー研究フィールド」の略で、太平洋沿いにある。再生エネルギーを利用した世界最大級の水素製造施設だ。

無料の生活循環バス

取材時は、富岡町の北隣の大熊町が運行している1日7往復(土休日は3往復)の「大熊町生活循環バス」が9時に出るとわかり、乗ってみた。大川原公営住宅経由大野駅までを結ぶルートで、海沿いではないが、運賃は不要で誰でも利用できる。

大熊町が運行する生活循環バス。4月以降、電気バスが導入されている(筆者撮影)
大熊町生活循環バスが発着するJR大野駅(筆者撮影)

富岡でも病院や郵便局に立ち寄るが、路線バスとの競合を避けるため、富岡町内相互間の利用はできない。バスとは言え、車両はタクシー会社からチャーターした大型タクシー(ワゴン車)だ。なお、4月1日からは電気バスが導入された。

終始、乗客は筆者一人であった。大川原地区には大熊町の新庁舎が移転してきており、復興拠点として住宅や商業施設の整備が進んでいる。鉄道駅からは遠く、常磐自動車道の常磐富岡インターチェンジが近い。

路線バスはもちろん、レンタサイクルもそうであるけれど、こうした鉄道の駅や市街地へのアクセス整備が復興へのカギの1つになるとの各自治体の考えは明確で、評価したい。

原発事故後の人口がまだ希薄であるとか、新たに復興市街地を建設したばかりといった事情があるなら、既存のバス会社は路線進出に躊躇するだろう。補助金を出したとしても同じで、ならば行政が自前でまず設定しよう。運賃も低廉にしたところで、収受や精算の手間を考えれば無料のほうがむしろよい。そういう取り組みと見てとれた。

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