Apple Watchで「心電図」取れる事の重大な意味 アプリ経由で「慶応病院」に診断してもらえる

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一方で標準デバイスは高価であり、多くのデータを集めることは難しい。

今回の取り組みは、そうしたジレンマのバランスを上手に取っている。単一の企業が開発するApple Watchというハードウェアは、確かに医療用計測機器と同じではない。例えばApple Watch Series 6から盛り込まれた血中酸素飽和濃度(SPO2)の計測を試みる機能について、日本では「血中酸素ウェルネス」という名称を名乗るにとどめている。

手首に巻くデバイスから得られるバイタル値への限界なども議論されるところだが、木村医師は「同じデバイスから安定した多くのバイタル値が得られるならば、絶対値としての精度は大きな問題ではない」と、臨床試験参加への門戸を広げることができるスマートウォッチ活用の意義について話した。

次期Apple Watchの噂

今後登場するだろう、新しい世代のApple Watchには、新しいバイタル値を計測するセンサーが搭載されるという噂もある。計測できる値は必ずしも医療グレードではなく、あくまでも健康状態を知るための参考値の場合もあるかもしれない。

しかし、その利用者が極めて大きな数になれば、生活習慣や他のバイタルとの組み合わせで有意な情報として活用できる例も出てくるだろう。

2019年12月に来日したアップルCEOのティム・クック氏(右)と慶応義塾大学病院特任講師の木村雄弘氏(筆者撮影)

アメリカ時間の6月7日から、アップルはWWDC(世界開発者会議)をオンライン開催する。例年、その年の秋にリリースされる新しい基本ソフトが紹介されるが、各デバイスの新しい活用方法なども広くアナウンスされる見込みだ。かつては臨床試験へのApple Watchの活用やその広がりが訴求された場でもある。

木村医師は「心房細動を検出する医療機器の開発につなげるには大きな壁もある。しかし自動的に診断を下すような装置、アプリの開発は困難であったとしても、日々の生活を見守り、習慣の問題について気づいてもらうことは可能だ。必ずしも医療グレードの製品やサービスが必要なのではなく、ヘルスケアやウェルネスといったより簡素なレベルの数値でも研究には役立つ」と、さらなるアプリ開発や研究への意欲を話した。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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