JR3社の業績は底堅いが、リニアや非運輸などの設備投資負担が重く財務改善ペースは緩やかに《スタンダード&プアーズの業界展望》


 運輸業では、月次の鉄道営業収入が対前年同月比で横ばいまでようやく回復し、5月の連休中の旅行客数も前年同期比でプラスに転じた。非運輸業では、安定した売り上げと利益を確保しているルミネ(ファッションや文具が中心)、アトレ(ショッピングセンター)に加え、エキュート(駅スペースでの小売り)を主要駅で順次展開しており、売り上げも順調である。

スタンダード&プアーズでは、小売業は、運輸事業と比べると事業リスクが高いとみているが、主要駅に直結した高い集客力を期待できる立地条件を最大限に活用し、テナントの入れ替えや店舗運営手法も堅実であることから、今後も着実に売り上げと営業利益を確保できるとみている。ただし、過去2年で営業利益や営業キャッシュフローの水準は大きく低下したため、2年前の水準に戻るには、今後3年程度はかかるとスタンダード&プアーズはみている。

JR東海は、JR東日本と異なって運輸事業の比率が高く、10年3月期を見ると、全体の売り上げの77%、営業利益では93%である。中でも旅客運輸収入の90%程度が、収益性の高い新幹線(東海道新幹線)であることから、連結営業利益率は20%程度と非常に高い。新幹線利用客数は出張や旅行客の利用が中心のため、在来線に比べて景気悪化の影響を受けやすいが、新幹線の旅客収入全体は、4月には対前年同月比1%増まで回復している。ただし、景気回復が緩やかなうえ、新幹線は高速道路料金の値下げ政策の影響も受けることから、今期業績は前期比で微減益の会社計画である。

JR西日本の10年3月期は、運輸事業が厳しく、大幅な減収減益になった。非運輸事業では、駅ビル開発やショッピングセンターが中心の不動産事業はほぼ横ばいであったが、物販・飲食の流通業は厳しかった。その結果、3社のなかで最も低い連結営業利益率は、さらに3.2ポイント低下して6.4%となった。首都圏と比べて、マクロ経済の環境の回復が緩やかであること、営業エリア内の人口の見通しが厳しいため、京阪神線、その他在来線の事業環境は厳しい。また、鉄道以外の事業では東日本ほどの事業基盤がなく、百貨店や新ビル開業による費用増加によって、同社によれば、今期の営業利益は前期比でやや減少する見通しである。

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