デフレの真の要因は人口の減少、移民政策へ本格議論を
観光客誘致の腹算用
人口政策とは何か。上野氏は「少子化対策、海外からの観光客誘致、そして移民政策」を挙げる。
少子化に対してはすでにさまざまな対策が取られつつある。子ども手当は民主党の政権公約の目玉で、少子化対策へ積極的な姿勢を示したものだ。しかし、上野氏は「子ども手当は現在子育て中の世帯の支援にはなるが、これから産もうとする人にどれだけ後押しとなるのか。企業内に保育所を設置するなど、働きながら産み育てる環境整備におカネを使うべき」と指摘する。
政府は95年の「エンゼルプラン」以降、子育て支援策を推進する。が、日本の若年人口(0~14歳)の割合は74年以来35年連続で減少、合計特殊出生率は回復傾向とはいえ、水準は08年で1・37と人口が横ばいとなる同2・1には大きく届かない。
海外からの観光客誘致は、滞在人口を増やすことによる広義の人口政策といえ、国内需要を高めデフレ歯止めにつながる。政府の新成長戦略のテーマにも「観光立国」が掲げられ、訪日外国人を20年までに2500万人、将来的には3000万人とし、2500万人による経済波及効果が約10兆円、新規雇用56万人とはじいている。訪日外国人の1人当たりの支出額は約18万円と推計され、仮に2500万人の外国人観光客が来れば、400万人規模の消費人口増という効果が期待できる。
しかし、08年の訪日外国人は約830万人で、フランスの8190万人の10分の1弱にすぎない。年による変動も大きく、09年は円高や景気低迷により約700万人に激減、政府の試算に過大感は否めない。
早晩移民の争奪戦に
そこで、人口減の抜本的な食い止め策として、移民政策への議論は避けて通れない。現在、日本では医療、教育、興行など14の専門的・技術的業種以外での外国人労働者の受け入れを認めていない。経済産業省では生産年齢人口をピークの95年水準に維持しようとすれば、今後20年間で1800万人の外国人労働者が必要と試算する。が、就労・就学などで日本に滞在する外国人登録者は約222万人(08年)にすぎない。