飲食店「デリバリー参入」が簡単にはいかない根拠 コロナ長期化で見えてきた課題と今後の展望

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「そもそも、デリバリーはお客さんと接することがなく、本質的には製造業です。飲食業をやりたい人はサービス業志向が強いので、黙々と弁当をつくるのはメンタル的に向いていない人が多いですね」

製造業であれば、規模の経済(※)になる。中には「ゴーゴーカレー」のように、自社の商品開発力と生産能力を生かし、大規模製造によってコストを下げながら商材として卸したり、フードデリバリーの新業態を立ち上げたり、製造業の分野にも踏み込む展開で生き延びている例もある。※規模の経済:生産量の増加に伴って、平均費用が低下し、収益性が向上すること

「デリバリーは、撤退戦と業態転換の組み合わせです。撤退せざるを得ないエリアからの撤退の意思決定をいかに早くできたか、そして、サービス業から製造業への思い切った業態転換にしっかりと踏み込めたかどうか、個々の経営者の意思決定の質の差が結果に現れています」

仮に小規模の飲食店が弁当の製造に取り組んでも、設備面で限界があり、配送費も大きな負担だ。たとえば、UberEatsの飲食店側にかかる手数料は35%。手数料を払った残額から食材原価を払うと、結局ほとんど手元に残らない。

学生たちもデリバリーに流れた

日本の飲食店従業者数は約400万人。そのかなりの割合がアルバイトスタッフだ。学生のアルバイト先としても大きな受け皿となっていた飲食店だが、コロナ禍でアルバイトを解雇せざるを得ず、苦境に陥った学生たちなどがデリバリーにもかなり流れた。

「飲食業界は元々、約25兆円のマーケットです。その中でデリバリー市場は6000億円ぐらい、アプリなどのオンライン系のデリバリーは約4000億円と言われています。まだこれから伸びるとは思うので、デリバリーは今後、業界全体の10%前後、つまり、2兆円ぐらいにはなるでしょう」と周栄さんは見ている。

しかし、それでも元々飲食業界で働いていた人数を吸収できるほどのマーケットではない。

実際、「2020年の5月あたりは飲食店の求人を出すと一つのポジションに50人も来るほど人材流通市場が動いていましたが、この一年間、求人がなさ過ぎて飲食から離れてしまった人が多く、今は募集をかけても人が来なくなってしまいました」というのが周栄さんの実感だ。

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