飲食店「デリバリー参入」が簡単にはいかない根拠 コロナ長期化で見えてきた課題と今後の展望

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2021年5月現在、まだ収束の兆しが見えないコロナ禍。感染リスクが高まる大人数の会食は控えられ、飲食店は営業時間の短縮要請に苦しんでいる。これに対して、飲食チェーン「グローバルダイニング社」が、東京都の営業時間短縮命令とその根拠となるコロナ特措法が違憲・違法であるとして訴訟を起こすという動きもあった。

「行政に対して抱えているストレスやフラストレーションを代弁するのは意義のある行動だと個人的には思います」と周栄さんは話す。

一方で、一律「一日6万円」の時短協力金が、従業員なしの小さなスナックやバーなど業態によっては“協力金バブル”をもたらす矛盾も発生している。

「飲食業界自体がこれまであまりロビー活動を行ってこなかったため、政治に影響力をおよぼすことができないという脆弱性が明らかになりました。こうした補助金もいつまでも出るわけではなく、店の真価が問われる苦しい時期が来ると思っています」

周栄行さん(写真:リディラバジャーナル編集部提供)

では、飲食業界は今後どのように生き延びていくのか。

「コロナによって突発的に飲食店が倒れるのは辛いことではありますが、元々過当競争が起きていた日本の飲食業界で店舗数が大きく減ったこと自体は、これからの業界全体の健全化には避けられないことだと思っています」

今後生き残っていく3つの業態

その上で、今後生き残っていくのは次に挙げる3つの業態だろうと周栄さんは考えている。

一つはアートの領域に近く、食通のコミュニティになるような超高級業態。二つ目は、寿司、鰻、天ぷらのように、家庭でなかなか再現できない職人技による専門特化業態。そして、吉野家やサイゼリヤのように、家庭でつくるよりも安く食事ができる超低価格のライフインフラ業態だ。

「中途半端なクオリティの食を出していた店には差別化要因もありませんし、飲食店としての根源的な価値に向き合えていない店はどうしても退場せざるを得ません」

実際、地元の人たちに愛されている「根源的なファンを獲得できているような店や、食のクオリティ・レベルが高い専門店」は、このコロナ禍も乗り切れるだろうと周栄さんは見ている。

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