飲食店「デリバリー参入」が簡単にはいかない根拠 コロナ長期化で見えてきた課題と今後の展望
コロナ禍による時間短縮営業や休業要請などが長期化する中、飲食店はどのような課題を抱え、どんな局面を迎えようとしているのか。
サービスを提供する飲食店の厳しい状況は、食材を提供する生産者や、労働力を提供してきたアルバイトの学生など、私たちの生活にも影響を与えている。
飲食店の経営やプロデュースを手がける周栄行さんの視点から、コロナ禍の一年間の飲食業の動きを振り返り、業界の今後を展望する。
そもそも日本は、世界の国々の中でも飲食店の数が非常に多い。「人口1,000人あたりの飲食店数が、ニューヨークでは2店舗程度ですが、東京では7店舗を超えています。諸外国では路面店がほとんどで、駅前の全館飲食店のテナントビルなどは日本にしかありません」と周栄さんは話す。
飲食店は参入障壁が低い
なぜこれほど飲食店が多いのか。その理由のひとつに、参入障壁の低さが挙げられる。
「食品衛生法などの規制も緩いですし、欧米やアジアの多くの国々ではエリアごとの店舗数に制限がかかっていますが、日本ではそのような制限がなく、過当競争が起きます」
その結果、安くて美味しい食が提供されるが、日本の飲食店は総じて利益率が低い。
「外食系上場企業の営業利益は平均して3%程度という超薄利です。優秀な店舗でもFLコスト(食材費と人件費)が60%を占め、そこに家賃が15%前後かかり、水道光熱費などを引くと手元に5%ぐらいしか残りません」と周栄さんは話す。
中でも固定費である家賃が高い。周栄さんは昨年来、家賃を売上歩合いにして変動費にシフトさせ、ビルのオーナーと痛みを共有する仕組みを提言してきたが、この一年そういった議論はあまり活発にならなかったという。
「フレキシブルに対応した人もいるようですが、オーナー側も固定資産税が払えないとか、REIT(不動産投資信託)などでは物件自体の収益性が求められ、家賃を簡単には下げられなかったわけです」。