ガザ地区の高層ビルが攻撃対象にされる理由 高層ビルを生活の場とするガザ地区住民の気持ち

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そうしてどんなに犠牲者が増えても、イスラエルを憎む人が増えるだけで、ハマースの支持率は下がらない。なぜなら、パレスチナ政府役人や議員の汚職や関係者が既得権限を守るためにさまざまな裏工作を行っていることが明らかになっているからだ。

一例をあげると、汚職で得た富でセメント工場を建てた人が、イスラエル政府が作る分離壁建設のために市場価格より安価にセメントを売ってパレスチナ人のひんしゅくを買っている。それに対して清貧を絵にかいたようなハマースは、難民キャンプで皆と同じように質素に暮らして私服を肥やそうとするような者はいない。

今回のガザの高層ビル攻撃について、イスラエル軍の公式発表は、ロケット攻撃をしてくるハマースの施設があるからだとした。だが、イスラエルの「チャンネル12」が、ガザの9つの高層ビルを空爆したパイロットたちをインタビューした番組で、Dというパイロットは、「確かにわれわれは何トンもの弾薬を投下した。だが自分も同僚たちも、この空襲で高層ビルを破壊したのは、ガザの武装勢力が蹴りを入れてくるのに対する、われわれの挫折感のはけ口だった」という。

ハマースを攻めきれないイスラエル

イスラエル軍の発表によると、パレスチナ武装組織は4000発近くのロケットでイスラエル南部の植民地やテルアビブを含む中部の都市を攻撃した。Dは、「われわれはロケット発射を阻止できなかった。テロ組織の指導部をつぶすこともできなかった。だから高層ビルを破壊しているのだ」と述べた。

もともとガザの高層ビルは多くない。全部で27棟くらいしかなかった。この数少ないタワーにさまざまな教室や職業訓練施設、語学学校、慈善事業団体、会社、報道メディアのオフィス、住宅、レストラン、カフェ、携帯ショップなどなどが雑多に入居していた。

日本では郊外のショッピング・モールにあらゆる年齢層が集まってくるように、ガザのタワービルも多くの人々が集まる場所だった。英会話学校をはじめ、キャリアに活かせるスキルを学ぶ教室や学校があり、就活するのも、人脈を広げるのも、友達と遊ぶのも、食事をしたり、お茶をするのもすべてタワーだったのだ。

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