「殿」細川元首相と共通点が多い「宇宙人」鳩山首相
塩田潮
5月政権危機説が飛び交っている。
この欄の昨年11月6日更新の記事で「鳩山内閣は8カ月目で最初の危機」と書いたが、政権発足8カ月目の今月、本当に危機に直面しそうな空気である。「8カ月目」に着目したのは、政権交代で誕生した16年前の細川内閣の「二の舞い」の危険性を感じたからだ。
鳩山首相が細川元首相の轍を踏まないと肝に銘じているのは間違いないが、当時の細川首相と鳩山現首相は、乏しい与党経験、急浮上の首相就任、アピール力の不足、希薄な人間関係と弱体な人的ネットワーク、強い指導性の欠如、脇の甘さと「カネ」の疑惑、言葉の軽さ等々、共通点も多い。さらに5月危機説と併せて、鳩山首相の出処進退、つまり辞め方が話題に上り始めたが、その点でも、「宇宙人」と「殿」は、世間離れした発想、淡泊な政権欲が共通項と見る人も少なくない。
細川氏の出処進退の哲学は「大輪の打ち上げ花火みたいにドーンと思い切りよく」「辞めるなら全盛のときに辞めろ」であった(著書『不東庵日常』)。実際に政権交代を果たし、高支持率のまま突然、投げ出して辞めた。
鳩山首相はどうするか。大輪の花火を打ち上げたのは同じだが、全盛は早くも終わった感がある。だが、「宇宙人」は「殿」と違って、よくいえば天衣無縫の楽天家、きつくいえば無神経な鈍感人間との評も根強い。
仮に5月危機を乗り切っても、7月の参院選、9月の民主党代表選と荒波が待ち構えるが、投げ出し辞任の気配はない。鳩山政権の「1丁目1番地」は、政治主導実現、地域主権改革、それに祖父・鳩山一郎元首相の置き土産の「北方領土問題の解決」もある。
6月、9月、11月と3度続けてロシア大統領と会う約束をしているのを見ると、年内退陣は想定外だろう。問題は荒波を泳ぎ切れるかどうかだ。
政権運営では、もう一人、研究の題材となる過去の首相がいる。類似点が多い故小渕元首相の例だが、比較、考察は次回に。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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