バブル期を超える企業の求人総数、深刻な少子化、団塊世代の大量退職、若年離職者の増大、雇用システムの根本的な変容…採用を取り巻く環境は極めて厳しい状況におかれている。 この超売り手市場の採用環境で、最も苦労しているのは採用担当者である。ところが周りの理解は思うように得られないようだ。「採用マルハダカ」では、採用担当者のアンケートを通じて本音を引き出し、その実態に迫りたい。 |
●こんなに厳しい新卒採用環境
【図1】求人総数・民間企業就職希望者数・大卒求人倍率の推移 |
出所:リクルートワークス研究所 |
企業アンケートに入る前に、厳しい採用環境について説明しておこう。リクルートワークス研究所の調査によると(図1)、2008年卒予定の大学生・大学院生に対する求人総数は93.3万人で、過去最も多かったバブル期(1991年卒)の84.0万人を大きく上回り、同調査開始以来最高の数字となっている。ところが、求人倍率は08年卒が2.14倍、91年卒が2.86倍である。この数字だけ見るとバブル期のほうが採用が大変だったように見えるが、実はそうではない。それはなぜか。
08年卒のほうが91年より求人総数が多いのに求人倍率が低いのは、大学生の数が増えたからである。大学生の民間企業求職者数は08年が91年の1.5倍(436,500人対293,800人)となっている。しかし、この間に出生人口はどんどん減っている(18歳人口は91年が 204万人に対して、08年は133万人)。つまり、人口は大幅に減っているのに大学生は大幅に増えているわけで、大学全入時代(入学志望者数より大学定員のほうが多い)を控え、言葉は悪いが「猫も杓子も」大学生になっていると言える。
非常に荒っぽい計算をしてみよう。人口に対する優秀層の出現率が一定だと仮定する。91年から08年に18歳人口が約65%に減り、大学生が1.5倍になったということは、0.65/1.5=約0.43となり、学生と会って優秀である確率は半分以下になったということになる。しかも、ゆとり教育の弊害が言われ、各種調査で日本人学生の能力低下が問題視されている。
一方の企業側は、バブル期と採用方針が大きく変わり、「採ってから育てよ」ではなく、「優秀な人材を厳選して採れ」に変わっている。右肩上がりの経済環境の時と違い、企業は組織をスリムにしようとしており、余剰人員を抱えたがらない。優秀人材が希少になっているのに、厳選採用なので誰でも採っていい訳ではない。バブル期であれば、大学生であれば誰でもとりあえず採ってしまえ、という雰囲気があった。一次面接のその場で内定、即拘束なんていう笑い話のようなことが現実にあった。しかし今そんな荒っぽい採用方法は取れなくなっている。
いかに現在の採用担当者が困難な状況に置かれているかが分かるだろう。
トピックボードAD
有料会員限定記事
キャリア・教育の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら