規制に振り回されるパチンコ業界の明暗

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ギャンブル性の高い機種を一掃され閑古鳥が鳴いていたパチンコホールに客足が戻ってきた。目当てはパチンコ新機種だ。一方でメーカーは優勝劣敗が鮮明になっている。(週刊東洋経済2月23日号より)

パチンコ業界に異変が起きている。

2004年に遊技機規則が改正され、昨年6月までにギャンブル性の高い機種はパチンコホールから一掃された。この影響でホールは低落していたが、ここに来て客足が戻ってきているという。実際、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」では、07年12月のホール売上高は5カ月ぶりにプラスに転じている。

業界の救世主となったのが、パチスロに人気が押されぎみだったパチンコ機だ。遊技機メーカー大手のSANKYOや京楽産業(KYORAKU)が「エヴァンゲリオン」「必殺仕事人」「倖田來未」など、集客力の高いパチンコ機種を昨年後半ごろから相次いで投入。これらの新機種がユーザーを呼び戻している。

パチンコが救世主、メーカーは盟主交代

06年5月の風適法改正で、ギャンブル性に敏感なヘビーユーザー目当てに過度な集客イベントを行うことを自粛させられたホールにとって、旧型パチスロ(4号機)の高粗利は”メシの種”だった。「店の設置台数は7対3から6対4でパチンコが多いのに、粗利の6割はパチスロで稼いでいた」(周辺機器メーカー)。

しかし、06年後半からギャンブル性の低いパチスロ(5号機)への入れ替えが本格化。これと歩調を合わせるようにノンバンクへのグレーゾーン金利規制が導入され、資金の出どころを失ったヘビーユーザーがしだいにホールから離れていった。

07年春にはホール大手のダイエーが破綻。金融機関がこぞってホール向けの与信を絞り込んだため、資金繰り難から破綻や廃業・転業に追い込まれる中小ホールが続出した。

逆風が吹き付ける中、パチスロユーザーの受け皿として先述のパチンコ新機種が登場。これらの機種は技術的な完成度の高さだけが好感されたのではない。誰もが知っている人気キャラクターを使用したことが、ユーザーの娯楽感を刺激した。メーカーがテレビCMなどで広告宣伝を積極化したことも奏功。常連客だけでなく新規客も増加し、ただでさえ平日より集客の多い週末、ホールは一層賑わっている。

パチンコの稼働率が上昇したため、ついに収益ベースでパチスロを逆転。そのため、ホールはパチンコの設置を拡大。最大手のマルハンの場合、昨年4月ごろはパチンコ66%、パチスロ34%の比率だったが、直近では73%対27%までパチンコを増やしている。「パチンコ機中心でやっていく自信がついた」とマルハンの韓俊専務。遊技機販売大手フィールズの大屋高志社長は「パチンコがパチスロを救う」と破顔一笑する。

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