「便秘に悩んでいる人」が知らない肛門の基礎知識 肛門科医が解説「スッキリ排泄」に要る3つの力

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これら一連の反射を「排便反射」と呼びます。反射は、意識的に止めることができません。つまり、カラダは便を出そうと自然に勝手に働くわけです。排便反射を利用すれば、いきみすぎることなく、勢いよく便が出てスッキリ排泄できます。「便意がある」ということは、「便が出口まで下りてきて、今にも出ようとしている」ということなのです。

ただし、排便反射は長時間続くわけではありません。反射が起こっている「まさに今そのとき」に便を出さないと、反射がなくなってからいきんで無理に排便することになります。その結果、お尻に負担がかかってしまい、いぼ痔などができやすくなってしまうのです。

便意を我慢するから便秘がはじまる

なぜ便がスッキリ出ずに残るのでしょうか? それは、健康的な排便に必要な力の3番目、排便を我慢するからです。

3つの力で人間が意識的にコントロールできるのは、「排便力」しかありません。そのため、排便を我慢すると、便秘が生じてしまうのです。

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「私は、行きたいときにトイレに行って出しています」と反論される方もいらっしゃると思いますが、トイレを我慢した経験は過去に誰にでもあるでしょう。

社会生活を送るうえで、いつでもどこでも排便できるわけではありません。そのため、私たちは、成長の過程で排便をコントロールすることを覚え、適切な時間に、適切な場所で、排便するようにしています。

しかし、便意をもよおしているのに我慢してしまうと、「トイレを我慢するのが当たり前の肛門」になってしまいます。出ようとしていた便は、肛門に挟まったままというわけです。

佐々木 みのり 肛門科医/大阪肛門診療所副院長

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ささき みのり / Sasaki Minori

大腸肛門病専門医・指導医。大阪医科大学卒業後、大阪大学医学部皮膚科学教室入局。4年間、皮膚科医として勤務後、1998年より肛門科医に転身。同年7月に肛門科女性外来を開設。

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