中国の国有通信最大手の中国移動(チャイナ・モバイル)は5月17日、上海証券取引所に人民元建て株式の「A株」の上場を申請したと発表した。最大9億6500万株を発行し、完了後の株式総数に占める比率は4.5%となる予定だ。オーバーアロットメント(追加売り出し)の場合、新株の発行数は最大11億900万株となり、完了後の株式総数に占める比率は5.14%となる。
同社の説明によると、新株発行で調達した資金は、高品質の5Gネットワーク、クラウド向けのインフラ、ギガビット・ブロードバンド、新世代情報技術の研究開発およびデジタル・エコシステムなどの建設に投入する予定だ。
中国移動のA株上場申請はマーケットにとっては想定内の動きだった。2020年の年末、アメリカのトランプ前大統領が任期終了前に発動した中国3大通信キャリア中国移動、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国聯合通信(チャイナ・ユニコム)に対する制裁措置は、中国電信が長らく検討していた「A株回帰」(訳注:海外で上場した中国企業が中国国内に戻り株式上場を行うことを指す)を後押しした。その時点から、中国移動のA株回帰についても市場関係者の間で噂されていた。
海外で株式上場し、経営は中国国内
中国移動には株式上場は海外で、経営は中国国内という構造的な問題があり、それが同社の中国国内での上場を難しくさせていた。ある投資銀行の責任者も「中国移動の経営規模は巨大で、上海証券取引所の新興ハイテク企業向け市場の『科創板』でも、あるいは深圳証券取引所の新興企業向け市場の『創業板』でも、上場条件に合わない」と指摘していた。
そのうえで、この投資銀行責任者は「中国国内のメインボードで上場するためには、海外で上場した中国企業のA株回帰のための新たなルール作りが必要だ」とも語っていた。
中国移動の董事長(会長に相当)を務める楊傑氏は3月25日に開催された決算説明会で財新記者の質問に応じ、A株回帰について「中国の資本市場ではこの数年、一連の新たな政策が施行され、海外で株式上場し経営実体は中国国内にある中国企業がA株回帰するための有利な環境が整備された」、「当社として今まさに積極的に情報を収集し、対応について早急に検討をしているところだ」と述べていた。
現在、中国の通信3大キャリアのアメリカでの上場廃止は決定的となっている。ニューヨーク証券取引所は2020年12月31日、トランプ政権が下した行政命令に基づき、中国の3大通信キャリアに対する上場廃止プロセスを始動すると発表した。3社はともにその見直しを求めたが、ニューヨーク証券取引所は5月7日にプロセスの続行を決定した。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は5月17日
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