日本人はICT教育の本質をいまいちわかってない 元グーグル副社長が示唆する「未来の教育」
とすると、「分数の割り算はひっくり返して掛け算を行なう」と覚えさせるのではないとしても、それを納得させることのできるテキスト・動画・静止画を、縦横無尽に駆使した電子教科書を直ちに与えてしまうというのは、「問題そのものを発見し、その上で、正解があるかどうかもわからない問題の答えを求めて考え抜く」という目的に、適っているとはいえません。
つまり、電子教科書は、
「分数の割り算は、どうすればよいと思うか?」
あるいは、
「分数の割り算は、ひっくり返して掛け算するという説があるが、どうしてだと思うか?」
と、「問う」内容で構成されていなければなりません。
これこそが、「反転学習」の出発点であります。
「答えは1つではない」と思い知らせる
反転学習(flip teaching、または、flipped classroom)とは、まずこのような課題や問いを生徒に与え、自宅学習で考えさせて、その考えた結果を次の授業に持ち寄らせ、発表させて行ないます。たどり着いた答えの多様性や、たとえ同じ答えにたどり着いたとしてもその答えに至る過程の多様性を体験させて、「答えは1つではないのだ」ということを思い知らせるのです。
「反転学習」あるいは「アクティブ・ラーニング」は、そのようにして、多様性の表現、共有、それをめぐる質疑、つまりは、協働学習を実現させることを目標とする、新しい授業形態です。
このような反転学習やアクティブ・ラーニングが、学校でも家庭でもインターネットにつながったPCを駆使したICT利活用教育によって、2021年の4月から、いよいよ具体化し始めています。
学校の先生方の役割は、これまでの一方的に正解を伝授するといったことではまったくなくなり、教室の対面授業においても、オンライン授業においても、ICTを利活用して、この反転学習やアクティブ・ラーニングのプロセスのファシリテータ、生徒たち相互の協働学習の旗振り役、導き手という役割に変貌を遂げることになります。
電子教科書も、問いを投げかけるだけでなく、教師用版には、先生方のそのような役割を補助するようなテキスト・動画・静止画の断片(これを「マイクロステップ教材」といいます)が豊富に用意されるのが望ましいのです。
このような150年に1回といった教育の大変革では、現場の先生方の負担がどうしても大きくなりがちです。
その負担を少しでも軽減するような配慮が、国全体でなされなければなりません。
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