汚染されると心身に大害「超危険な家カビ」の正体 知らぬ間に増殖、対策はとにかく換気と乾燥

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2011年の東日本大震災によって発生した津波では、多くの家屋が壊れ海水に浸った。濡れた柱や建材の表面に、ほかのカビに混じってスタキボトリスが発生した。

2018年の夏、広島県などでも大規模な水害があり、多くの家屋が泥水に浸った。その後も、大きな台風の到来で、しばしば水害が起きている。私は、被害に遭った家屋や家具のカビ被害が気になる。スタキボトリスの汚染による健康被害が2次的に起きる可能性はつねにある。

カビは成長に伴ってさまざまな化学物質を分泌する。分泌物が液状の黄色や赤色のものも多いが、微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)と呼ばれるにおいのする気体もある。アメリカで有名なスタキボトリスの健康被害の原因物質は、サトラトキシンという物質だと考えられている。

このカビ毒は、食品を介してではなく、環境中からヒトの呼吸を介して体内に取り込まれるのが特徴だ。胞子中に含まれるカビ毒の量は、胞子が小さいために、ピコ(10のマイナス12乗)グラム単位と非常に少ない。健康被害を及ぼすには、カビ毒の量が少なすぎるという批判があるほどだ。そのため、スタキボトリスが、そのカビ毒によって健康被害を引き起こすことがあるかどうかの論争には、アメリカでもまだ決着はついていない。

なお、環境中に浮遊するこのカビが、アレルギー性疾患の原因である可能性も否定できない。アメリカ環境保護庁は、スタキボトリスから発生するMVOCがアレルギーの原因物質であると指摘している。

カビによる健康被害には、精神的なダメージも大きい。ブラックモールドの被害が2000年ごろにアメリカで社会現象になったのは、カビの毒性という科学的な裏付けは不十分でも、その不気味さが大きく影響していた。不気味さは嫌いなものから恐ろしいものに変化したと言える。

カビの生えた家は壊すしかない?

カビがいったん生えると、その家は壊すしかないのだろうか。住宅にとって、カビは取り返しのつかない厄介者なのか。私は大きな誤解が蔓延していると思う。

私は、ある裁判で鑑定人を務めたことがある。築数カ月の新築住宅の水道管からの水漏れで、床下がプールのようになった。床の裏側はもちろん、床や壁の一部がカビだらけになった。

漏水を発見した直後に、住環境のカビを測定したところ、一般住宅の100倍以上の胞子が室内に浮遊していた。家族は仮住まいを強いられたとハウスメーカーを相手取って裁判を起こしていた。争点は、水抜きをして半年になるが、その住宅は安全に住める環境になったかどうかだった。

実地調査では、フローリングの床板を外し、プールのように水の溜まった跡の床下を見ながら、私が説明する形になった。外した床板の周りに、多くの関係者が取り囲むようにして、私の話に耳をそばだてメモを取った。

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