汚染されると心身に大害「超危険な家カビ」の正体 知らぬ間に増殖、対策はとにかく換気と乾燥

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私の説明は次のとおりだった。カビ汚染の原因はすでに取り除かれている。半年くらい注意して換気などに取り組めば、住宅内部はかなり乾燥して、生きているカビも大幅に減少する。住環境のカビ測定を再度行って、通常の値になっていれば住むことが可能だろう。カビ汚染の跡を消しにくい場合もあるが、たとえ残っていても、カビ自体は死んでいることが多い。

また、建材に発生したカビによって、建材の強度が著しく低下する例は非常に少ない。必要と思えば強度を測定したらよい。ほかに問題がないのに新しい建材を放棄するのは、もったいないと言えよう。結果的に両者は和解となったが、その際は、この意見が尊重されることになった。

新築住宅でも壁内部にカビが生えていることが多い

別の事例も紹介したい。マンションが建ってから半年後に、売れ残った部屋のいくつかの壁の壁紙をめくってみたら、壁の中に暗色のカビ汚染が多く見つかった。そこで、マンションの販売会社が、施工会社を訴えた。新築マンションは通常、壁の中もピカピカなはずだと言うのだった。

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残念ながら、新築住宅でも壁の内部はカビの生えていることが多いのである。ただ、壁内部は通常は見えない部分であり、一般にはあまり知られていない。湿っていた建材も乾けば、それに伴っていったん生えたカビは次第に死滅していく。

目で見てカビ汚れはあっても、必ずしもカビが生きているわけではないし、それが新たな汚染源になるわけでもない。建材のカビ調査で、生きたカビがほかの住宅に比べて少なければ問題はない。長年住んでいる間に、住宅のさまざまな部分のカビは、湿ると生えてくるし、乾けば死滅することを繰り返している。

住環境のカビ対策は、一にも二にも換気、乾燥である。例えば、長期出張で3カ月も家を空けていると、浴室に生えているカビも全滅するようだ。たとえ、壁がカビで黒く汚れたままでも、それらはすべてカビの死骸である。死んでいれば、胞子も四散し、その胞子を吸い込んで起きるアレルギー疾患を心配する必要もまずない。

浜田 信夫 大阪市立自然史博物館外来研究員

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はまだ のぶお / Nobuo Hamada

1952年、愛知県生まれ。農学博士。京都大学薬学部卒業、同大大学院農学研究科博士課程修了。大阪市立環境科学研究所へ。住環境のカビについて研究し、住宅、エアコン、洗濯機などのカビの生態を解明。2012年より現職。長年にわたり、食品などに生えるカビについて市民からの相談も受けている。著書に『カビはすごい! ヒトの味方か天敵か!?』(朝日文庫)など。

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