汚染されると心身に大害「超危険な家カビ」の正体 知らぬ間に増殖、対策はとにかく換気と乾燥

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この住宅では、配管の水漏れで床の建材が水浸しになって反り返り、黒いカビが内壁などに大発生した。すると住んでいた家族が頭痛、倦怠感、呼吸障害などの重い病気にかかり、家から避難する事態になった。

家族は、この住宅を維持・管理する保険会社が、水漏れの修理を怠ったためにカビによる健康被害が起きたと、1999年にテキサス州の裁判所に訴えたのである。

このカビをさらに有名にしたのは、2001年に出された判決の賠償額が日本円で約32億円と巨額だったことだ。「セレブなカビ」だとの記事も見られた。そして、2002年末に、保険会社の巻き返しの結果、4億円で決着がついた。賠償額の高騰は、保険の掛け金の上昇につながると反論したのである。

裁判所に訴えた1999年には、この保険会社へのこのような賠償請求が12件であったのに対して、2002年には賠償請求は1万2000件に達した。また、1999年から2002年までに、カビ被害による損害請求額は3000億円超に達した。

「スタキボトリスが健康被害の原因である」と問題になったのは、テキサス州の事例が初めてではない。それ以前の1994年に、アメリカ中西部のオハイオ州で、特発性肺胞出血(IPH)の小児患者が多く発生し、36人の患者のうち9人が亡くなった。

患者宅について調べると、多くの住宅が水害のために湿ったことがあり、著しいカビ汚染に見舞われたことがわかった。とりわけスタキボトリスというカビが多く見つかり、動物への暴露実験などから、このカビの胞子を吸い込んだことがIPH発症の原因だとされた。

タワーマンションの壁紙の裏に真っ黒いカビ

黒いカビが壁一面に生えて、健康被害にあったという相談を、私も受けたことがある。2009年のことだ。話は関西のテレビ番組から持ち込まれ、突撃取材に協力することになった。

大阪市内のJR環状線の駅前の、30階余りのタワーマンションの上層階だった。書斎や寝室の壁の一角が濡れていて、浮き上がった壁紙の裏に真っ黒いカビが一面に生えていた。室内にはカビ臭が漂っていた。住人によれば、ひどい時は咳こんで、息ができないくらいの発作が続くという。

壁紙をはがして調べたところ、カビの種類はなんとスタキボトリスだった。原因は、壁の中の水道管からの水漏れだった。その後、カビによる健康被害があったと、訴訟を起こした。なお、このカビは、日本でも壁紙などにしばしば見られる。

このカビは、2005年にニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナによる洪水でも問題になった。水害を被った家屋に猛烈にカビがはびこった写真が世界に発信された。被害を受けた家屋の内部では、通常の5000倍に当たる空気1㎥当たり100万個のカビ胞子が検出されたこともあった。

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