「ルワンダでタイ料理屋!?」シングルマザーの選択 「異世界転生」級に人生リセットして得たもの
「なぜ、ルワンダでタイ料理屋をやってるんですか?」と、よく聞かれる。「会社を退職しルワンダへ渡り、未経験で飲食事業、それも日本食ではなくタイ料理屋を立ち上げた」という私の経歴を見れば、「は? どういうこと?」となるだろう。
まさにそのまんまのタイトル、『ルワンダでタイ料理屋をひらく』と題した書籍を先月、左右社より刊行した。この本でも、ルワンダに移り住む前は何をしていたか、移住することにしたきっかけ、なぜそこで飲食店を経営することにしたのか、はたまたなぜタイ料理なのか、これらのことに触れている。
が、正直なところ、読んだ後に「なるほどそりゃあ、ルワンダへ行ってタイ料理屋をひらくことになりますよねぇ! 合点がいきました!」となる方のほうが少ないと思う。
タイ料理屋とかいいと思う
言ってしまうと、きっかけはルワンダを旅行で訪れて、ここに息子と住みたいと直感で思ったから。なぜそこで飲食店なのかは、息子を自分で養っていかねばならないという前提の上で、他に事業があまり思いつかなかったから。なぜタイ料理屋なのかは、現地に住む友人が「タイ料理屋とかいいと思う」とアドバイスをくれたから。以上だ。ますます、「は? どういうこと?」だろう。
「ルワンダでタイ料理屋」なんて多くの方々にとっては突拍子がなさすぎるし、本質的に気になるのは「なぜそんな決断ができたのか?」だろう。
でも実は私としては、一大決心をしたという意識すらない。ルワンダを初めて訪れた旅行中、明け方の澄み切った空気と静寂に包まれながら、別に理由を並べるでもなく、私は決めていた。「うん。そーね。ルワンダに引っ越そう」と。ちょうど30歳の誕生日だった。もともと決まっていたかのように自然な流れで、会社を辞め、都内のアパートを引き払い、スーツケースに荷物を詰めて息子とルワンダへ移り住んだ。
親を説得しないといけないような年齢でもない。シングルだから身軽でもあった。息子は当時5歳。小学校高学年くらいなら迷ったかもしれないが、まだなんとでもなる歳だと思った。
本書には、もう少し説得力のある根拠もルワンダの社会経済面からも書いてはいるが、それも行った後からわかったことだ。直感で動きながら、それが果たして良さそうなのかどうなのか、走りながら考えればいい。というか、動かないと見えてこないことって、かなり多いから。
しいて言えば、失うものは何もなかったというのは、決断できた大きな要素かもしれない。新人時代は全然売れない営業で、ほどなくして結婚・出産・育休。離婚してシングルマザーとして復職し、激務の日々。出産前に成功体験やきらびやかな業績という「貯金」がなかった私は、それは過酷なワーキングマザー生活となった。
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