「ルワンダでタイ料理屋!?」シングルマザーの選択 「異世界転生」級に人生リセットして得たもの

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そんな風に過ごしながら5年が経ち、何もかもをリセットしたくてルワンダまでワープして来て、そこでゼロから作ったものに見えてきたもの。それは他でもない、ありのままの自分だった。でも驚いたことに、ありのままの自分には価値がない、何者かにならなければと思い詰めてここに来たようなものなのに、その自分「らしさ」を、初めて愛おしく感じることができたのだ。

人をあっと言わせるクリエーティブなことができず、やりたいこともなく「おまえはどうしたいの」と聞かれてもうつむいていた自分。周りの言う通りにしかできない、ルーチンしかこなせない、つまらない自分。でもだからこそ、環境に言い訳せず愚直に地道に繰り返した日々の積み上げが、まさにそこに結晶していた。

当時は直感に従って移り住んだけれど、今になって言語化するとすれば、きっと私は自分の当時使っていたモノサシをぶっ壊しに、東京を、日本を、飛び出したのだと思う。こうあるべきだというモノサシで自分を追い詰めて、どうしようもなくなってしまって、でも同じ場所にいながらそのモノサシを捨てる勇気がなくて、自分ごと未知の場所に放り出してみた。

そうやって人生を「リセット」したけれど、私の人生は、当たり前だけど、これまでの人生の先に続いていた。ルワンダに来てからも、ずっと。でも、自分を苦しめていたモノサシから解放されて、驚くほど生きやすくなった。会社員を辞めてルワンダへ居を移すのは、荒療治ではあったかもしれないけれど、とっても効果的な手放し・再受容のプロセスだったのだ。

人生の醍醐味を存分に味わう

新型コロナの到来以来機会が減ってしまったが、以前はよく日本からスタディーツアーなどで多くの学生さんがルワンダを訪れていた。お店にインタビューに来てくださる方もいて、「なぜルワンダでタイ料理屋をやろうと思ったんですか?」とやはりよく聞かれる。

『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします

アフリカにスタディーツアーに来ているいわゆる意識の高い学生さんたちは、国際協力への情熱や、崇高なビジネスマインドをもってアフリカ大陸に果敢に挑んでいるのですよね、と言わんばかりの目を私に向ける。

そこで私が「いや~、旅行で来たときに気に入って、会社辞めて引っ越そうって思って」と話し始めると、目が点になる。話の最後には、「ありがとうございました!」と礼儀正しくお礼を言ってくださるが、「参考になるのかならないのか、わっかんねぇぇ」という表情を隠し切れない方が少なくない。

求めていた答えが、私の話の中にあったかもしれないし、なかったかもしれない。納得できたかもしれないし、てんで納得できなかったかもしれない。他人の経験やロールモデルは参考にはなるかもしれないけれど、結局自分にとっての答えは、自分自身の中にしかない。そして自分自身のことなのに、見つけるのがなかなか難しかったりもする。

でもその真実を探し続ける旅路こそが、人生だ。時に場所を変えてこれまでの価値観を壊してみたり、しまい込んでいたもののふたがひょんなことから開いたり、それが人生という旅の醍醐味なのだろう。自分の人生の醍醐味を、世間や他人のモノサシで縛られることなく、存分に味わっていきたい。

唐渡 千紗 ルワンダのタイ料理屋「ASIAN KITCHEN」店主

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からと ちさ / Chisa Karato

1984年生まれ・東京都出身。早稲田大学法学部卒業後、株式会社リクルートに就職、人材事業に従事。30歳で退職し、当時5歳の息子を連れてルワンダへ移住。日本とは全く異なる環境であるルワンダで、ゼロからタイ料理屋「ASIAN KITCHEN」を立ち上げ、経営に奮闘している。

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