「僕一人で2000万円以上稼げるならば問題ありませんが、残念ながらそうではありません。ならば2人合わせてその収入を確保したいと思いました」
出費や貯金残高にも敏感な孝之さん。前の彼女と別れて結婚を意識するようになり、婚活の方法を再検討した。マッチングアプリでは100人以上の女性と会ってきたが、男性は有料のアプリが多く、デート代もかさむ。また、孝之さんが望むような高年収の女性と出会えることも少なかった。
そんなときに見つけたのが、以前に本連載でも紹介したことのある「キャリ婚」という婚活サービスだった。共働き希望の男女を引き合わせるという趣旨で、男性は登録無料。女性は会費を支払う代わりに気になる男性にお見合い申し込みができる、という仕組みだ。
「身分証明書のコピーを提出して、あとは電話で面接を受けた記憶があります。2019年の秋に登録して、5人ほどの女性からメッセージをいただきました。年収、仕事内容、写真の3点を確認して、実際に会ったのは妻だけです」
年収を「下に」サバよんで登録していた敬子さん
その女性は、今年の初めに結婚した医師の敬子さん(仮名、43歳)。年収はなんと「下方修正」してプロフィールに載せていたらしい。実際は1500万円ほどあるのに1000万円程度と記載したのだ。さきほどから「ぶっちゃけ話」をしている孝之さんの隣で笑っている敬子さんに理由を聞いた。
「職業や年収を正直に書いていい思いをした経験がないからです。相手の男性から引かれてしまうことが多いですし、明らかにお金目的の男性からアプローチされたこともあります。失礼ながら、この年齢でこの年収はちょっとな、と思う人でした」
敬子さんは、同業者である医師の男性と10年間の結婚生活を送り、浮気をされて離婚した経験がある。一人暮らしは快適だった。でも、協力し合える関係の男性であれば再び一緒に暮らしてみたいとも思っていた。
「私の人脈は医療関係者に集中しています。医者はもうコリゴリなので、待っているだけでは出会いはないと思って入会しました」
孝之さんと敬子さんのお見合いの日は大雨だった。しかも、敬子さんはギリギリまで仕事が終わらず、少し遅刻してしまった。平然と待っていてくれて、あれこれ質問してくれる孝之さんに好印象を持った。
「それまで10人ぐらいにメッセージを送り、3人の男性とお会いしたと思います。申し訳ないのですが、孝之さん以外は『可もなく不可もない』という印象です。生活をともにすることは想像できませんでした。孝之さんには、ペースが合うな、この人となら暮らしていけるかも、と感じた記憶があります」
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