日本とアメリカの「消費回復」が目に見えて違う訳 国力の違いはあるが、政治力の差も明らかだ

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新規感染者数がアメリカで激減しているのに、日本で増加しているのは、なぜか?

その理由は、アメリカではワクチンの接種が進んでいるが、日本では進んでいないからだ。

NHKのデータによると、人口100人当たりのワクチン接種回数は、アメリカでは76回だが、日本では3.3回にすぎない(5月9日現在)。

日本政府は、7月までに高齢者の接種を完了するとしている。つまり、それ以外の人たちの接種は、7月末からやっと始まることになる。

しかし、7月までに高齢者を完了させるのさえ難しいとの観測も広がっている。

今年の夏になっても、コロナ感染者が増加していくのをコントロールできず、経済が停滞し続けることを覚悟しなければならない。

国力の差だが政治力の差でもある

4月のIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しは、「ワクチン格差が問題だ」と指摘していた。

これを読んだとき、私は愚かにも、「ワクチン接種ができない開発途上国の人々は気の毒だ」と思っていた。

しかし、実は、気の毒なのは日本人だったのである。

アジアでも、韓国やインドネシアの人口100人当たりのワクチン接種回数は8人だ。日本はその半分にもならない。

ワクチンを独自に開発できなかったのは、国力の差だから、いかんともしがたい。

しかし、接種がこのように遅れているのは、政治力の差にも起因する。

つまり、日本政府は、政策の方向付けを誤ったのだ。

日本政府はGoToキャンペーンを行った。

他方、アメリカ政府はワクチンの開発と接種に全力をあげ、コロナのコントロールに成功した。

その差が、いま経済回復力の差として、歴然とした形で表れている。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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