インド感染爆発、主犯は「変異株」という誤解 低いワクチン接種率と対策の緩みが招いた惨事
インドの首都ニューデリーの巨大医療機関、サー・ガンガ・ラム病院では4月上旬、ワクチン接種を完全に済ませた37人の医師が新型コロナウイルスに感染し、発病した。
大半は軽症だったが、インドの壊滅的な第2波の背後には別のウイルスが存在するのではないかとの懸念が一段と強まった。免疫を回避する、より感染力の強い変異株が世界で最もひどいインドの感染爆発を加速させている、という見立てだ。
しかし、今のところ決定的な証拠はなく、科学者らは別の要素が凶暴な感染爆発につながった可能性があると警告する。今回の感染の波はインドの首都をまたたく間に圧倒。医療は完全に能力の限界を超え、火葬場の火はノンストップで燃え続けている。
異次元感染の主因はイギリス型?
変異株が厄介な存在であることは間違いない。
「今回の波は臨床的にこれまでとは違う動きになっている」。サー・ガンガ・ラム病院の上級心臓外科医、スジェイ・シャッド氏はそう話す。同病院では2人の医師の治療に酸素補給が必要になった。「若者にも感染が広がり、生後2カ月の新生児にまで感染している。これまでになかったことだ」
医療が危険なまでに逼迫し、病院が患者の受け入れを拒否せざるをえなくなる中、科学者は変異株がもたらした影響の解明に取り組んでいる。だが、利用できるデータは極めて少ない。インドはウイルスを追跡する仕組みをしっかりと整えてこなかったからだ(この点については、他国も多くが似たような状況にある)。
インドの懸念は「B.1.617」と呼ばれる自国由来の変異株に集中している。インドの国民、一般メディア、医師の多くが、この変異株のせいで第2波が深刻なものになったと考えているのだ。