インド感染爆発、主犯は「変異株」という誤解 低いワクチン接種率と対策の緩みが招いた惨事

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これに対し国外の研究者は、これまでの限られたデータを見る限り、もっと一般的な変異株「B.1.1.7」(いわゆるイギリス型)のほうが大きな役割を果たしている可能性があると指摘する。B.1.1.7は昨年終盤にイギリスで大感染を引き起こし、ヨーロッパの大部分を襲った。アメリカの新規感染も、今ではこの変異株が主流だ。

「B.1.617が感染拡大につながっているのはおそらく間違いない。ただ、感染の急増にどの程度寄与しているのか、その寄与度が現在流行している他の変異株、特にB.1.1.7と比べてどうなのかははっきりしない」とスクリプス研究所(カリフォルニア州サンディエゴ)のウイルス学者、クリスチャン・アンダーセン氏は話す。

ワクチン接種の遅れと政府の過失

科学者は、変異株のほかに、もっと明白な別の要因が深刻な第2波に拍車をかけている可能性があると考えている。

例えば、インドのワクチン接種は国民の表面をなぞったにすぎず、接種を終えた人の割合は2%にも満たない。専門家たちは、昨年の第1波後に進んだ対策の緩みに加え、ナレンドラ・モディ首相の過失も批判している。同首相は少し前に大規模な政治集会を開催したが、これにより感染が拡大し、「最悪期は脱した」という誤ったメッセージが国民に広まった可能性がある。

イギリスのウェルカム・サンガー研究所でCOVID-19遺伝子プロジェクトの責任者を務めているジェフリー・バレット氏が言う。「B.1.617が原因だという結論に飛びつく例が多くみられるが、別の要素のほうが原因としては重要だろう」。

暫定データはワクチンがB.1.617にも効くことを示唆している。ただ、有効性は多少下がった。インドはアストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発したワクチンに大きく依存しているが、このワクチンはファイザー/ビオンテックおよびモデルナのワクチンより効き目が弱いため、変異株を防ぐ効果も相対的に低いのかもしれない。

「ワクチンは今のところ有効だが、効き目は下がる傾向にある」とニューヨークのベルヴュー病院の感染症専門医で伝染病学者のセリーヌ・ガウンダー氏は話す。

次ページワクチン接種しても発症するケースも
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事