「ある犯罪者」を22歳の起業家が「尊敬もする」理由 「やっかいな存在」リクルートを作った江副浩正
また、ファクトとロジックを積み上げていったうえで、ここが大一番というところで、ちゃんと勝負に出られるメンタリティが凄いところです。
やはり、勝負は、積み上げてゆけばやがて勝てるというものではありません。最後の最後で決め手になるのは、直感のような、言語化できない感覚だと思いますし、江副さんは、そのセンスが抜群だったのだろうということが読んでいて伝わってきました。
なかでも、鹿児島に保養所として土地を買うエピソードは印象に残りました。土地を買いたいというところまでは、多かれ少なかれ経営者が考えるシナリオですが、江副さんには、裏目的がありました。
政府がその近辺に石油プラントを建造する計画を耳にしており、土地の価格が上昇すること、加えて借り入れの担保にすることも見込める。そこまで先を見越したうえで資金余力を投下したのです。まだ誰も勝負すらしていないような小さなところに働かせる勝負勘というものが、他にも無数にあったのだろうと想像します。
起業家にとって「やっかい」なリクルートという存在
冒頭にも申し上げましたが、僕は江副さんを知らない世代で、リクルートという会社の大きさや壮大さも起業してはじめて知りました。それまで「リクナビ」などのサービスは知っていても、その母体がリクルートであり、創業者が江副さんであることまでつながっていませんでした。
しかし、いざ起業して、法人向けのサービスを作るうえで調べ始めると、必ずリクルートの名が登場します。参考になることばかりです。
例えば、リクルートがコロナ禍においても増収増益しているのは、リクルートキャリアコンサルティングという再就職支援の領域で、不景気に強いビジネスモデルを持っているからでもあります。
再就職支援は、アメリカではメジャーですが、日本ではバブル崩壊後やリーマンショックのあたりで企業数が増え、その後は一定の好景気の中で次々とM&Aが行われて、大抵リクルートやほかの大手人材系の傘下に入ったわけです。
しかし、今回のコロナ禍で、また新規事業として増えるのではないかと思い、実は弊社も2020年2年頃から動き始めました。しかし、すでに業界トップのリクルートが、あまりにも強いネットワークを構築しており、これは難しいと判断した経緯がありました。
なにせ、リクルートほどポートフォリオをしっかりそろえており、また、人生の節目節目にトータルに複合的に利用されるサービスを展開している会社は他にありません。
それはリクルートの魅力です。しかし、これから新興起業したいベンチャーにとっては、かなりやっかいな存在でもあります。入り込みたいと思うところには、すでにことごとく、リクルートがいるわけですから。
(構成:泉美木蘭、後半へつづく)
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