「ある犯罪者」を22歳の起業家が「尊敬もする」理由 「やっかいな存在」リクルートを作った江副浩正
反対に、江副さんに欠けていたと思うところは、師匠を見つける力です。江副さんは、たびたびピーター・ドラッカーの言葉を語りはするものの、身近な師匠として仰ぐ人物はいませんでした。
エンジェル投資家やメンターなど、江副さんをいさめる人がいなかったということは、読み終わった後、唯一と言っても過言ではないほど、救われないと感じる部分です。師匠と出会えてさえいれば、事件すら起きなかったのではないかというぐらいの転換点になったはずだと思うのです。
これは、僕自身が痛切に共感した点ですが、プライドの高さと師匠を持つことができるかどうかは、一定レベルで比例すると思っています。
僕もかつてはプライドの高い人間でした。今は3人のメンターの方にお世話になり、その方々の教えについては徹底して学び、ある意味で無条件に信じようと考え、師事しています。
単純に知識として残る本や、ネットなどでアーカイブされている学びだけではなく、やはり、人からの学びや強烈なメッセージというものは必要で、それは、師匠となるような人がいて初めて得られるものです。僕自身、師匠の存在によって救われていると多分に感じています。
その点、残念ながら、師匠を持てなかった江副さんには、ダークな孤独感が付きまとうことになったのではないでしょうか。
恐らく、江副さんのように、ある一定の企業規模を超えた立場になってくると、そこに集まる人間の属性も変わるだろうと思います。そのときに、誰の言葉に耳を傾けるかが重要で、徐々に、自分の頭で考えることが限界になってしまったのだろうと想像しています。
江副の天才的な人心掌握術
ビジネスの参考に取り入れたい点もたくさん詰まっていて、非常に勉強になりました。
いちばん印象に残っているのは、採用の場面です。江副さんは、優秀な人をいかに採用して、活躍させるかにこだわっていました。ドラッカーの言う、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの話にも通ずるものですが、自分よりも優秀な人をリクルーティングすることで、大きなことを成し遂げていくという考え方です。
そのためにはまず、お金を使うこと。
江副さんは、半端ではない資金リソースを割いて人を採用しようとした経営者です。僕にはその意気込みはありませんでした。採用はギャンブルに近く、だからこそ投資しづらいと感じていたのです。しかし本書を読んで、僕の考え方も柔軟になりました。
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