「禁酒令」でもう極限、酒販店が上げる怨嗟の声 業界団体首脳「感染拡大は酒のせいではない!」

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――例えば、回復が厳しい飲食店からスーパーなどに卸売り先を切り替えることは難しいのでしょうか。

榎本:それはできない。我々は中小規模の流通業者であり、小売りには国分グループ本社や三菱食品など、大手の中間流通業者がいる。理論的には入り込むことが可能でも、現実的には難しい。

佐々木:中間流通業者は(卸売り先との関係などで)歴史と伝統があり、昨日、今日でできる商売ではない。われわれのような業務用酒販店では、ある程度の企業規模がないと価格対応もできない。突然「飲食店が厳しいからスーパーに」と宗旨替えをしても、買ってくれる先がない。

家庭用ビールサーバー強化は「おかしい」

――これまで酒販店に支えられてきたメーカーから、何かしらの協力は?

佐々木:昨年は商品の返品を受け付けてもらった。5月の大型連休にリゾート施設が休業してしまい、あらかじめ納品していた商品の行き場に困っていた。そこで業酒連がメーカーに要望書を出したところ、返品を受けてくれた。

「おとなしくしていたら、死ななければならなくなる」と、危機感を募らせる業酒連の榎本会長(記者撮影)

榎本:ただこれには裏もある。メーカーは商品を廃棄しても酒税が還付され、全額損をするわけではない(編集部注:「蔵出し税」である酒税は、メーカーから出荷した際に課税される)。一方でわれわれ卸売りは、酒を捨てても税金は返ってこない。

――飲食店で生ビールを楽しめない中、メーカーは家庭用に生ビールサーバーを販売する動きを見せています。

榎本:あれはおかしい。流通を担う業者の多くが反対している。

1938年に酒販免許制度ができて以来、ずっと酒販店はビール会社の下請けを薄利で行い、全国津々浦々にビールを届けてきた。彼らがここまで(事業拡大して)きたのは、われわれが下請けをしてきたからだ。それなのに、(酒販店の苦境下で)中間流通を飛ばす商品を拡充させるのは納得しがたい。

株主だけでなく、これまで商品を届けてきたわれわれも、彼らのステークホルダーだ。行政だけでなくメーカーにも、もっと惻隠(そくいん)の情をもってもらいたい。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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