日本発の新世代「3Dプリンター」がもたらす革命 トヨタも注目のベンチャーが変えるものづくり

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EXF-12の予定価格は4500万円(税抜き)に設定されている。小説「下町ロケット」のモデルとなった小橋工業が出資するとともに量産を担当。4月から生産を開始し、年内に3台、2022年には10台を生産予定だ。

しかし、原氏が狙っているのはさらにその先のイノベーションだ。

現在開発中の次世代3Dプリントヘッドを用いれば、ヘッド単体を外販し、既存工作機械への応用も容易になるためだ。すでにその研究開発は進んでおり、製品試作に向けて準備している段階だ。

大幅に「必要電力」を下げることが可能に

現在のエクストラボールド製3Dプリントヘッドは既存の射出成形ノズルを基に設計されているが、次世代機では樹脂を溶融させるヒーターの方式を最新技術を用いた手法に変更(詳細は非公開)。大幅に必要な電力を下げる。

必要な電力を下げることで可能になるのが、3Dプリントヘッド自身に樹脂を溶融させる能力を持たせることだ。ヘッド内部に小型発電機を内蔵させ、そこから生まれる電力だけで樹脂を溶かすことができるようになるため、ヘッド自身に電力供給を行う必要がなくなる。

目的はマシニングセンターなど工作機械への応用である。

「EXF-12」の射出成型用ノズル(写真:エクストラボールド)

マシニングセンターの加工ツールの一つとして3Dプリントヘッドを装着し、基本形状を造形させたうえで切削加工することで仕上げることが可能になるほか、ロボットアームを用いた造形など既存の工作機械を活用可能になる点がポイントだ。

将来的にはEXF-12にも切削加工機能を追加し、切削仕上げまでを行えるようにするアップデート計画があるが、すでに工作機械を導入している町工場などは導入しにくい。そこで工作機械のオプションツールとして導入可能にすることで、用途を広げようというのだ。

原社長は「既存の工場にある使い慣れた工作機械を活用できるうえ、初期コストを抑えることができる」と話す。マシニングセンターなどでは切削加工ツールなどを駆動する回転軸があるが、それを利用して発電するため給電のための改造などは必要ない。

ただし樹脂材料を供給する経路は必要となるため「工作機械メーカーとの間での調整を進める予定」(原社長)だ。すでに工作機械メーカー大手と情報を共有し、対応方法を検討し始めているという。

既存の工作機械に追加ツールとして3Dプリントヘッドを追加できれば、応用の幅は大きく広がり、潜在的な顧客層も大幅に増える。プリントヘッド単体の販売は、目的や形態により50万〜200万円程度の価格帯に複数モデルが用意されるため、初期コストも大幅に下がる。

ただし、一般に工作機械を扱う技術者は樹脂成形の専門知識を有していないため、機械を管理する工員が扱えるのかという疑問も出てくる。

この点について原社長は「どの材料をどんな環境下で成形するか、温度をどのぐらいに設定する必要があるかなど細かな使いこなしは必要です。樹脂の色が違うだけで適切な温度は変化する。そこで3Dプリントする際の温度、吐出量などの条件をデータベース化し、AI技術を用いることで簡素に使えるようにするサービスを提供する予定です」と話す。

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