日本発の新世代「3Dプリンター」がもたらす革命 トヨタも注目のベンチャーが変えるものづくり

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長く3D CADや高精細なテクスチャーを再現する3D金型などの事業を行ってきた原社長だが、日本のものづくり現場における3D CAD化は中国や韓国に比べて普及や使いこなしが圧倒的に遅れている。

その理由について「日本は三面図を見れば立体造形をすぐに頭の中で想像できる優秀な職人が多かった。3D CADを使いこなすよりも平面の図のほうが手早くコミュニケーションできたんです。中国や韓国ではそうした技術者が少なかったため、3D CADを基礎としたものづくりの仕組みが定着し、技術の進歩とともに効率が大幅に上がったという経緯があります」と原社長は指摘する。

既存の技術者が使いこなしている工作機械をアップデートし、成形から仕上げまでを一貫して行えるようになれば、従来とは異なるものづくりの常識を作り出せるかもれない。

以前から3Dプリンターには、電子的なデータを送り込むだけで造形物が出来上がる“物質転送装置“のような壮大な夢が語られてきたが、製品品質の造形をプリントしたうえで切削仕上げまでを自動でできるようになれば、まさに“物質転送装置”そのものの使い方提案も可能になるだろう。

交換頻度の低い部品を在庫させることなく、必要に応じてさまざまな部品を出力できれば、流通コストを抑えることができる。

「一点もの」に対応することも可能

また、いわゆる“一点もの”のデザインを取り入れることも可能だ。

例えば工夫を凝らしたインテリアデザインを実現するために、棚や各種治具、あるいは家具などをプリンターで出力して組み込むといったことが容易になる。自動車の内装デザインをフルカスタムで提供するといったことも可能で、顧客からのリクエストがあればさらに調整、変更を行ったうえで納品することもできる。

エクストラボールドの入り口にあったさまざまな試作出力(筆者撮影)

あるゼネコンは、現場に合わせて型枠をプリント出力する構想を持っているという。そうなれば、極めて繊細な造形までをCAD設計でコントロールできる世界が建設現場にも及ぶようになる。

拠点ごとに出力センターを配置し、設計・デザインと生産を完全に分離、オンデマンド化するといった企業が出てきてもおかしくはない。

気に入った造形の製品(例えば家具)をウェブで注文して、近隣の出力センターで受け取ることができる。そんな未来はそう遠い日の話ではないのかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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