日本発の新世代「3Dプリンター」がもたらす革命 トヨタも注目のベンチャーが変えるものづくり

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エクストラボールド社長の原雄司氏はこれまでのキャリアで3D CAD、3Dプリンターの販売・サポートを手がけ、実際のものづくりを行う際のコンサルテーションを行ってきた。実際にユーザーとして、そして代理店として3Dプリンターを扱うその中で、素材だけではなくさまざまな問題を感じ取り、自ら解決するためにエクストラボールドを設立した。

同社が実現したのは樹脂製系に用いる射出成型用のノズルを、3Dプリントヘッドに応用するというアイデアだ。そして、そのヘッドを用いて世界最大の3Dプリンターを開発。量産に用いる射出成型ノズルを用いることで、汎用の樹脂素材ならばなんでも使えることが大きな特徴だ。

製品そのものを出力できる速度と素材自由度

同社の3プリンター「EXF-12」は1.7メートル×1.3メートル×1メートルというサイズを造形可能で、複数のプリンターを連結することでさらに大きな出力を得られる。これまでも1メートルクラスの立体物を造形できる製品はあったが、ここまでのサイズを出力する製品はなかった。

プリント速度が遅ければ、出力サイズが大きくとも待ち時間が増えるだけだが、プリントヘッドに採用しているのは樹脂製品を量産するノズルだ。1時間あたりの樹脂出力は15キログラムに達し、これは既存の大型3Dプリンター(1時間あたり数グラム)の数百倍の速度だ。

さらにEXF-12では、前述したように成形に用いる素材を選ばない。射出成形が可能な樹脂であれば、基本的にどのような素材でも利用できるうえ、専用素材も不要でリサイクル樹脂も利用できる。エンジニアリングプラスチックや炭素繊維、バイオセルロースを用いた短ファイバープラスチックから、柔軟なエラストマーまでを扱える。

樹脂の吐出量が圧倒的に多いため、大型の造形物を出力する際の積層間接着強度(プリンターが出力する樹脂層同士が接着される強度)も射出成形と同等の品質を出すことが可能であり、例えば樹脂製のイスなど家具をそのまま出力することもできる。

つまり利用できる樹脂の種類、および原材料コストは一般的な射出成形とまったく同じ。量産に用いられる素材を射出成形と同じ品質で、金型を用いず立体成形出力できるのだ。

この大型3Dプリンターには自動車メーカー、自動車部品メーカー、業務用インテリアデザイン、家具メーカーなどが注目している。

ダイハツのコンセプトカー開発時にエクストラボールドの技術を応用。短期間で外装を仕上げることができた(筆者撮影)

例えばダイハツは軽トラック・コンセプトカーの「TsumuTsumu」を開発する際、造形試作用の外装部品をEXF-12で出力。通常、週間かかる外装デザインの工程を2週間弱で終えることができたという。

トヨタは早くからエクストラボールドの技術に着目し、自動車パーツそのものの出力、個人の嗜好性に合わせた内装デザインなどの可能性を念頭に、エンジニアをエクストラボールドに派遣。その可能性を探っている。

原社長によると、今後も自動車部品メーカーの前田技研や大手化学材料メーカーなどのエンジニアを受け入れる予定だという。

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