なぜ、完全自動運転はすぐ実用化できないのか コンチネンタルのレベル4公道実証で得た核心
また、駐車場への右折時、対向車が道を譲った場合でも周囲の状況を“ほどよい時間で”検知してから右折したり、白線がない敷地内ではデジタル地図上に白線を引いてそれに沿って駐停車したりとさまざまなユースケースを体験したが、どれも実に自然な動きで安心でき、乗り心地もよかった。
さらに降車する際には、車内モニタリングシステムにより忘れ物があると、注意喚起のアナウンスを流す機能もあった。「バス会社のデータでは、年間で6万本以上の傘の忘れ物がバス車内にある」との指摘に対応する。また、車内車内で人が倒れたり寝ていたりする状況も自動で検出する。
「2030年代頃がメド」という普及のカギは結局…
万が一、事故が起こった場合については「できるだけ多くのデータを保存、解析できる体制を整えている」という。
自動運転の事故の責任については各国の道路交通法に従って判断するが、さまざまな内容が複合的に影響することが考えられるため、“ケースバイケースで判断する”という国際協議の場での認識を考慮した形だ。
コンチネンタルの自動運転開発は、ドイツでアルゴリズムなどのシステム開発、中国でスマートシティを想定した開発、シンガポールでイージーマイルとの共同開発、そして日本でSIPを活用した公道実証を2019年から行うなど、地域の特色を生かして開発体制を敷いている。
今回の試乗で「自動運転としての完成度は極めて高い」と筆者は実感したが、市場への本格導入についてコンチネンタルは、「2030年代頃がメド」とまだかなり時間がかかるという認識を示す。
2030年代という時期は、自動車メーカー各社が、「条件付自動運転」である自動運転レベル3の普及が徐々に始まると予測する時期と一致する。
筆者は直近で、「2025年『自動運転レベル4』に立ちはだかる壁」「トヨタが自動運転で『世界初』にこだわらない訳」という2つの記事で、社会における自動運転の必要性について問題提起してきた。
導入コストや通信インフラの整備など、自動運転の実用化にはさまざまな課題がある。そのうえで、どんなに技術革新が進んでも「どこで」「誰が」「どのような状況で」「なぜ必要なのか」という、自動運転導入に対する基本中の基本を国、事業者、そしてユーザーの間でさらに議論を深めることが必要だ。今回の試乗で、そうした考えを筆者として再認識した。
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