トヨタが自動運転で「世界初」にこだわらない訳 「技術競争」から「普及」のステージへの転換
トヨタは2021年4月8日、高度運転支援技術の新機能「Advanced Drive」を搭載したレクサス「LS500h」とトヨタの燃料電池車「MIRAI」を4月12日から日本国内で発売すると発表した。
この発表を受けて各種の報道はあったものの、ホンダが2021年3月4日に公開した「Honda SENSING Elite」を搭載した新型「レジェンド」と比べると報道が目立たなかった印象がある。
その理由は、ホンダは量産車として世界初の自動運転レベル3であり、一方のトヨタやレクサスは自動運転レベル2だから、という点に報道陣の関心があるからではないだろうか。
こうしたメディアの対応を、トヨタは十分に予測していたと筆者は思う。
「変わりどき」を感じたトヨタの回答
改めて自動運転のレベルについて説明すると、アメリカの自動車技術会(SAE)が示す考えが世界的な指標となっており、0から5まで6段階ある。その中で、レベル2とレベル3の間に技術的な壁があるといわれてきた。
レベル2までは、運転の主体がドライバーであるが、レベル3以上では運転の主体がクルマのシステムに移るため、自動車メーカーとして責任の重さが一気に上がる。
そうした中、トヨタは今回の記者発表で自動運転レベルという表現を一度も使わず、さまざまな走行シーンに対してクルマはどう対応し、またドライバーはどう対応するべきかという視点で話を進めた。
そのため、質疑応答の際には記者から「結局、これはレベル2なのか?」と確認される場面があり、それに対してトヨタ側は「レベル2だ」と回答している。さらに、「自動運転のレベルにこだわらず、真の安全を目指す」、「人とクルマが仲間のように共に走る」という言葉を繰り返した。
こうしたやり取りをオンラインで聞きながら、長年にわたり自動運転に関する取材を世界各地で続けてきた筆者は「そろそろ、変わりどきだな」という感想を持った。
これまでの取材を振り返ってみると、2010年代中盤、アメリカ・サンフランシスコ空港近くのホテルで開催されたAUVSIという自動運転関連シンポジウムの初日に、主催者側がいきなり資料を配布した。
そこには、自動運転レベルの表示が2種類書かれていた。1つは、アメリカ自動車技術会(SAE)の案、もう1つがアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)の案だ。この2案に対して、ドイツ連邦道路交通研究所(Bast)も含めた協議があったことを明らかにした。
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