清華大・理系エリートの超堅実な就職観 公務員になって党幹部になる夢も

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田中:男性にとって、やはり自分の給料で家や車が買えるというのは重要ですか?

:重要ですよ。少なくともそれで、自分の仕事は家庭生活に「保証」を与えられると感じられます。

:給料面だけでいえば、大手のIT企業の給料はすごくいいですよ。中国トップのゲーム会社なんか、日本の大手企業で働く日本人サラリーマンと変わらないんじゃないでしょうか。

田中:そういうところに就職して、いずれ独立しようと考えたことのある人はいませんか?

:大手のIT企業は、学校の成績が優秀だったり、専門分野があるくらいでは入れません。本当に特別にスマートな人しか入社できないんです。だから給料も破格なんですね。

:クラスメートの中には、学生のときからアイフォーンのアプリを開発して、バンバン稼いでいる人がいます。彼みたいな学生は大手のIT企業に就職して、いずれ独立してゆくでしょうね。

5年後、10年後の抱負

田中:そうすると、清華の理系にも2つの方向性があるといえますか? 1つは公務員や国有企業に進む道、もう一つは国内の民間企業や外資に進む道で、後者には創業を目指す人もけっこういる?

:そうですね。抱負があるのはどちらも同じです。ただ方向性は違っていて、民間企業を選択する人はビジネスの抱負、公務員に進む人は政治の抱負。中央常務委員までのぼりつめよう、みたいな。

田中:つまり韓青松さんは、いずれ政府要人動向を報じる中国のニュース番組でお見かけするようになる……、と。

蘇玲ほか:そうそう。

:いやあ、どうかな。

田中:5年後や10年後にどうなっていたいと思いますか? 

:僕はいずれ、今の会社で管理職につくだろうと思います。そのためにはまず研究部門の根幹社員となるところから始まるでしょう。さらに数年後には顧客部門にうつり、マーケティングや接客をしたりして、業界全体を理解します。そして将来的に本社の発展企画部に入り、さらに上を目指したいと思っています。これが10年くらいの計画です。

田中:女性のみなさんは?

:そんな先のことまで考えていないけれど、5年内にちょっと昇級できればいいかな。でも、できなくてもかまいません。私はあんまり上昇志向はないんです。 

理想は土日にボスから残業を命じられないこと、平日も時間通りに仕事が終わり、自分の時間を楽しんだり、時々、旅行に行けたりできればそれで十分です。

:私は数年後には管理職に進みたいですが、でも上にあがるのはすごく難しいと聞いています。職場の規模はあまり大きくありませんから、管理職ポストとなるといくつもありません。

それにいずれ結婚したら、仕事と家庭は、上手く両立させてゆきたいので、結局のところまずまずのところ落ち着くと思います。

:僕は省レベルか県レベルまでは出世したいです。ただ銀行の発展空間はあまりありません。数年後にもう少しチャレンジできる職場に転職するかもしれません。

田中:韓青松さんの場合は、10年後にテレビでお見かけすることになる、と?

:そんなにはやくはないですよ。この仕事は、10年で中間幹部職につくくらいのペースです。道のりは遠いですね。

この座談会は「アジア・トップ大学生の就職実態を探索する」(リクルートワークス研究所)の調査のために行われたものです。文中の登場人物はすべて仮名です。

 

田中 奈美 ルポライター

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たなか なみ

東京都生まれ。2003年より北京に留学。中国の社会生活やビジネスに関するルポを各紙誌に発表。著書に『北京陳情村』(第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作)『中国で儲ける―大陸で稼ぐ日本人起業家たちに学べ』(新潮社)がある

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