田中:蒼衛鑫さんの就職先は、上海の宇宙航空業界の国営メーカーですよね? やはり北京を離れたかった?
蒼:僕は小さいころからこの業界で働きたいと思っていたんです。だから大学院1年のときにこのメーカーの募集をみて、ここに入りたいとずっと思っていました。
実は他に、電力会社や電力系の科学アカデミーなどから内定をもらっていました。それに「選調生(幹部候補)」にも合格していたんですが、最終的に、自分が小さいころから夢見ていた仕事につかなかったらあとですごく後悔するだろうと思って、今の就職先に決めました。
本当に心底やりたいことを見つけるというのはそんなに簡単なことではないですね。それがみつかれば、あとは邁進するのみです。
田中:もし、この会社に受かっていなかったら、どこに行っていたと思います?
蒼:「選調生」になっていたと思います。
田中:清華の理系学生は「選調生」に応募する人が多いんでしょうか?
孫:僕も「選調生」に応募しましたよ。社会の公共サービスや地方の政策をやりたいと思ったんです。四川省の郷鎮政府の「選調生」に合格しました。
蒼:これは清華の環境が影響していると思います。(※清華大学は胡錦濤前国家主席など多くの政治家を輩出している)僕自身、高校のときは政治の道に進もうなんて、全く考えていませんでした。でも清華に何年かいて、その間にずっと大きな舞台で事を成すようにと鼓舞されてきました。それで知らず知らずのうちに、そのような機会を求めるようになりました。
田中:「国家に貢献しよう」ということですか?
蒼:そうです。そういうスローガンに感化されました。それに僕は大学で「補導員」(政治指導員)をしていたので、普段から学生たちにそんな話をしていました。
北京では家を買えない
田中:孫建平さんも「選調生」に合格したけれど、結局、そちらには進まなかったんですね。
孫:そうですね。そのころには、東北地方にある実家に帰ろうと考えはじめていましたので。
田中:どうして故郷に帰ろうと思ったんですか? 銀行でしたら、北京でも就職できたでしょう?
孫:私は北京が本当に好きではないのです。ここに何年かいましたが、環境面でも生活のプレッシャー面でも、好きになれませんでした。家に戻れば親戚も友人も近所にいて、生活のプレッシャーをあまり感じずにすみます。
田中:生活のプレッシャーというのは、例えば?
孫:北京では家を買えない。
田中:ああ、そうすると、結婚もできない……。
孫:そうですよ。最も現実的な問題です。
田中:みなさん、お給料はけして低くないですよね? でもやはり北京で家を買うのは難しいですか?
蘇:北京では年収20万元(1元=約16円)でも足りません。
田中:月給にすると1万5000元以上ですね。一般的なサラリーマンの給料からすると、まずまずだと思いますが、それでもだめですか?
孫:北京の家は郊外の70平米くらいでも200~300万元はします。そうなるとまず頭金を30%として、60万元は必要でしょう。年収20万元だと6年くらい働いてようやく頭金がたまります。さらにその後、200万元前後のローンが残りますから、それを一生がんばって働いて返して、ようやくマイホームが手に入るわけです。
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