目利き力が磨かれる「アートの題名」4択クイズ アート思考とイノベーションの関係
古いアート作品では、誰が作ったかすらわからないものも少なくありませんが、作者がわからないくらいですから、どんな題名をつけたかももちろんわかりません。
しかしそれが後に、すばらしい作品として愛されるようになってくると、呼び分けるために題名がつけられます。名前がないと区別できませんし、目録でチェックしたりするのも大変なので、通称として呼ばれていた名前や作品の管理係が目録をつくるときにつけた呼び名がそのまま題名になることもあります。変なたとえですが、ブチがあるので「ブチ」と呼んでいた野良猫が、飼い猫になって正式な名前になったみたいな感じでしょうか。
「ブチ」や「クロ」のように、後から誰かにつけられる名前は割とわかりやすいものです。神話の神や歴史上の人物などモデルがわかりやすいときにはそれがそのまま題名になります。『ミロのヴィーナス』や『サモトラケのニケ』 は『渋谷のハチ公』みたいなものですね。
昔は「題名」自体が重視されていなかった
昔のアート作品の題名がはっきりしないのは、紛失してしまったわけでは なく、そもそも「題名」自体が重要視されていなかったということもあるのです。実際、ヨーロッパですら 18世紀頃までは作品に名前をつけるという慣習は確立されていませんでした。
これは「作品」の扱いが変わったということも示しています。かつては彫刻や絵画なども、いまのように「作者」の表現たる「作品」という感覚はなく、建物やお墓を飾るためのインテリアみたいなものでした。
芸術家は教会や貴族からの依頼で絵を描き、それを納品していたのでそこにわざわざ題名をつけてはいなかったのです。当時の画家や彫刻家は、表現者としての芸術家というよりはいまでいう職人や専門職に近く、「自分の作品」という感覚自体が希薄だったのです。
しかし、時代が変わり、芸術家「個人」の才能や権利が重要視されるようになると、徐々に「作品は芸術家のもの」という感覚が生まれてきます。ルネサンスには芸術家は「天才」の代表とされ、作者の地位が一気に高まり、近代に入ると「作者」が名づけるのが普通だ、と考えられるようになりました。
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