日本の「電車の空調」がどんどん快適になった訳 累計16万台、国内シェア6割超の三菱電機の仕事

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三菱電機の古賀知樹さん

──設定温度は、車掌が操作しているのかと思っていました。

おそらくやっているところもあるかと思いますが、多くが全自動です。家庭用のエアコンとは違って制御が細かいので、難しさはあります。

──どんなに細かく制御しても、暑がりの人と寒がりの人では折り合いがつかないと思うのですが?

当然、万人が満足するのは難しいと思います。けれども最近では感覚ではなく、数字で評価して設定温度が決められるようになっています。車両が受ける日射の影響や、人からの発熱、乗客の着衣量など、さまざまなパラメータから評価する指標があります。その指標を用いることで、多くの人が快適に感じる空間を作れるというのが、最近の技術です。

──乗客がどれくらい厚着しているのかも計測しているのですか?

一般的には、ある程度“決め打ちの値”を使っています。その季節になったらどれくらいの着衣量があるかを仮定して数値を導き出しています。個々の乗客が薄着をしているか、厚着をしているかまでモニタリングしているわけではありません。

──湿度も制御されているのではと感じることがあるのですが、実際どうなのでしょうか。

湿度に応じた補正も入れています。湿度が低ければ当然、寒く感じます。そのあたりが冷えすぎ防止の制御に入っています。これは以前と変わってきた点です。

 もうひとつの理由は「メンテナンス」

──快適になった理由は3つあるとのことでしたが、「パワー」「制御」に続いて、残りのひとつはなんでしょう?

メンテナンスです。家庭用のエアコンでも「メンテナンスをきちんとしましょう」といわれるようになってきていると思うのですが、鉄道事業者も力を入れています。清掃をこまめにすることで、より能力を発揮する製品なので、鉄道事業者の努力も、快適になった理由のひとつとしてあると思っています。

──清掃は、どんな方法で行うのでしょうか?

そこは、まだ人の手がけっこう残っています。だからこそなのですが、メーカーとしてできることはメンテナンスをしやすい設計にしてあげることです。それが、メンテナンス時間の短縮につながり、鉄道事業者にもメリットになります。

──メンテナンスしやすい設計というと?

空調装置は屋根の上に載っていたり、床下にあったりします。これをメンテナンスのたびに外すことはできません。車両に付いた状態で、ある程度はできるようにしなくてはなりません。

そのために、鉄道会社の方と一緒に屋根に登って、「カバーを開けてこういうふうに洗浄するなら、サポートするような治具がここに必要ですね」などと検討します。屋根上で洗浄すると、当然、車内に水が入ってしまう恐れがあるので、養生するための板をつけられるような設計をしたりもします。

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