「妻の自殺は誰の責任?」、福島の静かな危機 震災関連死裁判の行方
東電はこれまで、裁判外紛争解決手続き(ADR)を担当する国の原子力損害賠償紛争解決センターを通して、自殺したケースを含む原発事故関連死の賠償問題を解決してきたが、その件数や賠償額など詳細については明らかにしていない。
政府が同センターで和解に至った原発事故関連死として公表しているのは25件、賠償額は1600万円を超えるケースもあったとしている。だが毎日新聞は先に、同センターが避難中に死亡した人の遺族に支払う慰謝料をほとんどのケースで半額にしていたと報じた。
東電は幹夫さんのケースも含め、係争中の訴訟についてはコメントできないとしている。
幹夫さんは裁判外で和解することは希望せず、訴訟の取り下げを勧める親類とは連絡を絶った。長男は私利私欲のために母親の死を利用していると同僚から非難され、仕事を辞めたという。
「良い悪い関係なく8月で(訴訟を)終え、女房にも報告してゆっくり休ませたい」と幹夫さんは語った。
重いうつ病
渡辺さん夫妻は福島県伊達郡川俣町山木屋地区で生まれ育った。はま子さんは本来、社交的で歌うことが好きな明るい性格だったが、避難させられたことで、急に重いうつ病になったのだと幹夫さんは考えている。
幹夫さんの弁護士である広田次男氏は、幹夫さんの訴訟判決が、東電を相手取る他の訴訟の判例となる可能性があると指摘する。
また、広田弁護士はこうした訴訟は金銭の問題ではないとし、「彼ら(遺族)にしてみると、父の人生は何だったのか、母は何のために死んだのかと、ただそれが知りたいのだ」と述べた。