テクニウム、衝撃の利己的なテクノロジー Wired創刊編集長が描く「テクノロジーが望むもの」
もしも地団駄というものが踏めるものであるのなら、この一冊を読みながら踏んでみたいと思う。
原題は『What Technology Wants』=テクノロジーの望むもの。テクノロジーの歩みを『種の起源』のように捉え直すという束ね方に独創性があり、これまでに見聞きしてきた様々な知識が一本の線でつながるようなダイナミズムに満ち溢れている内容だ。おかげで、本が本を呼ぶような深みにはまってしまい、関連書籍から逃れられなくなってしまったほか、一体、これまで自分はその手の本の何を読んでいたのだろうかとショックを受け、何もかもを一から学び直したい気持ちになった。
幅広いテクノロジーを網羅
一口にテクノロジーと言っても、本書で取り扱う対象は非常に幅広い。Facebook、Googleといった昨今のネット上のものから、電信・電話、言語や法律、石器、火の使用といった太古のものまで。日頃、その存在を意識しないほど浸透しきったものであればあるほど、テクノロジーと捉えることの面白みは増してくる。時間軸で追うことによって、一つのテクノロジーはさらに多くのテクノロジーを自己生成という方式で生み出してきたということがよく分かるのだ。
アルファベット、蒸気ポンプ、電気といった突破口となるテクノロジーは、本、石炭採掘、電話といったさらなる突破口を見出す発明につながった。さらにこうした進歩が図書館、発電所、インターネットといった突破口を生み出していく。各ステージにおいて、それ以前の発明の良いところを残したまま、さらなる力を加えてきた様子が伺える。
このようなテクノロジーの連なり、すなわち超個体としてのテクノロジーこそが、本書の邦題にもなっている「テクニウム」というものを指す。
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