「ダイバーシティ」の目的は多様性を企業の成長に結びつけること--第3回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション
現状を見ると、外国籍社員がなかなか管理職になっておらず、その理由として、すぐに辞めてしまう、空気が読めないといった、かつて女性社員の管理職登用の課題として挙げられていた理由と同じことが言われています。女性活用推進の活動の中で積み上げてきたものを、いろいろなカウンセルに展開しています。
グローバルの人材の流動はダイナミックです。最近、吸収・合併、インドや中国などの急成長によって、入社10年未満の人がIBM全体の中で半分を占める状態になっています。彼らをどうやって活かしていくか、また、グローバル経済は24時間365日止まらないので、その競争の中で、社員のワーク・ライフ・バランスの実現に会社としてどう取り組んでいくかが現在の課題です。
IBMは数年前から、グローバルに統合された企業(Global Integrated Enterprise)といって、世界170カ国を1つの企業と考え、たとえば日本IBMの社員はたまたま入社が日本だっただけで、日本にいてもグローバルの仕事をし、また世界各国にいつでも転勤の可能性があり、それを支える制度や企業文化を醸成する取り組みをしています。
海外から「日本IBMの中のそのポジションは日本人である必要があるのか」と時に指摘されます。日本人がグローバルで活躍し、日本がグローバル化するためには、言語、文化、さまざまなギャップがあり、それをどうやって埋めていき、グローバルで人材交流を交流していくかが今後のダイバーシティの課題だと思います。
司会 ありがとうございました。日本におけるダイバーシティは、最初は少子化問題や女性活躍推進から始まりましたが、だんだん一人ひとりの生き方や人生の価値観にあわせて働き、その中で生産性を上げて、企業として結果を出していくというように、考え方が変わってきたかなと思います。では、審査員の1人である渥美さんに今後の課題ということでお話しいただきます。
各自のマイノリティ体験などをコミュニケーションのきっかけに
渥美(審査委員) 今回は、たまたま外資系の受賞企業が多かったですが、私はダイバーシティ先進企業は地方の中小企業に多いと考えています。地方では、優秀な男性労働者の確保が難しく、女性はもちろん、たとえば介護のような制約を持って働いている男性や、外国人等をどうやって活かしていくか考えている企業がたくさんあります。
そのような企業を回っていて感じるのは、人に制度や取り組みをあわせることの大切さです。多くの大企業は、制度や取り組みに人をあわせています。これからのダイバーシティは現場に権限を委譲して、現場できめ細やかな運用ができる管理職を育成しなければなりません。人事部の仕分けではなく、現場に当事者意識を持たせることが、特に大企業にとって大事なポイントだと思います。社員がいかに自主的に動くか、やらされ感が生まれないように、現場に制度をあわせるという発想が非常に重要です。