「ダイバーシティ」の目的は多様性を企業の成長に結びつけること--第3回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション

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 次に、2つ目の個人にとってのメリットですが、当社では「個人個人はその違いをもって尊重されるべきである」ということが、行動指針の1つになっています。これは、業績以外では、その個人を差別してはならないということにつながります。
 
 当社には「ピープル・サポーティング・ピープル」という3日間のトレーニングがあります。この中で、目に見えない違いを抱えている人たちが、「自分はこんなところが違う。そして自分は、こうした点が不公平だと思う。だから、この点をもっと考えてほしい」と声に出して説明します。お互いに理解して、「そういう状況があるのであれば、何とかしなくてはいけない」と話し合いを進めていきます。ダイバーシティを進めることは個人にとってもメリットがあると思います。

そして3つ目のダイバーシティを継続的に進めるためには、システムとして確立し、その制度に従えばダイバーシティが推進される仕組みを作る必要があります。たとえば、採用の際に、男女のバランスのほかにダイバーシティを考えて採用したり、人事制度の一環としても、各管理職の業績評価の中に、「ビジネスをどのくらい成功させたか」と同等に、「ダイバーシティをどの程度推進させて結果を出したか」を入れています。

一番意欲づけになるのは、ダイバーシティに努力をしていることが誇りに思える、そして周りに誇れる環境になること以外にないと思います。

■質問2

司会 なかなか含蓄が深い大変な経験の言葉だと、しみじみ感じました。

では次に、「多様性推進の専任組織ができた経緯を教えてください」という質問です。
トップダウンでされたのか、ボトムアップなのか。どういう経緯で推進グループ室ができたのか。そのプロセスを日本IBMさん、お願いします。

梅田(日本IBM) IBMの場合は、きっかけは経営危機でしたので、トップダウンでダイバーシティ専任組織ができました。もともとイコール・オポチュニティーを担当していた専任組織がダイバーシティ組織に変わり、もっと戦略として考える方針に変わりました。

IBMの特徴は、方針はトップダウンですが、活動やその中の施策については、各分野を代表する社員をイニシアチブの中に入れて、その社員たちが課題を分析し、解決策を会社に提言する、という仕組みになっています。

社内を市場と考えると、一番痛みを持っている人たち、わかっている人たちが考えた方がよいと思います。ダイバーシティは、社員と会社が一緒に考え、推進するもの、というのがIBMのやり方です。

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