「ダイバーシティ」の目的は多様性を企業の成長に結びつけること--第3回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション
司会 補足質問ですが、職場代表として各現場から人を出す際には、どのように選ぶのでしょうか。
梅田(日本IBM) その分野で明確にロールモデルになり得る人、きちんと仕事で成果を出している人をまず選びます。たとえば、会社はどこに優秀な女性がいるかわからないこともありますので、まずは各部門から選出してもらい、カウンセルの活動を通じて人事もその人を育成していきます。
選ばれた女性たちにとっても、カウンセル活動を通じて女性活用や会社の経営的視点でものを見るという経験は自分自身を変えていきます。自分がロールモデルになるよう意識することで、幹部候補生であるという動機づけも一緒にやっています。
■質問3
司会 ありがとうございました。それでは次の質問です。
「ダイバーシティ推進のコストとベネフィットを、どのように計画しているのでしょうか」。
私もよく、「ダイバーシティの効果がわからない。特にビジネス上のメリットがわからないので、上の人たちが納得してくれない」という質問を受けます。
この質問は、コンサルタントのアクセンチュアさんにお答え願います。
本井(アクセンチュア) これは非常に難しい問題です。普通、経営者層が考えるベネフィットは、売り上げが伸びる、作業効率が上がる、といった定量的な数字です。しかし、ダイバーシティの活動を定量的に計るのは困難なのが実態です。女性社員が非常にいい環境で働けるようになったとか、仕事がしやすくなったといった、ぼやっとした定性的な部分がどうしても軸になってしまいます。これが、コストとベネフィットを説明しにくくしている原因だと思います。
定量的な数値を置くことは不可欠だと思います。ただ、売り上げが伸びるといった目標は難しいので、いろいろなKPI(重要業績評価指標)を立て、マネジメント層と共有することが大切だと思います。当社では行っていませんが、管理職を何人置くとか、離職率を数%下げるなど、まずは何らかの数値目標を置くことは、目標を共有するという意味でも必須だと思います。
ただ、効果は複合的に表れてくるので、「これをやったから、この数字が上がる」という1対1の関係ではありません。何をやったから良くなったのか、何がダメだから良くならないのか、というのは非常に悩むところです。しかし、そこをきちんとヒモ付けしながらやっていく必要があります。さらに、それに対してコストをかける優先順位を選別することだと思います。