リクルート、アジアで急成長の「秘密」 現地トップが語る、ライバルとの大激戦に勝つ戦略

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しかし、人材紹介ビジネスは目に見える商品がないからこそ、仕事を動かす社員のマネジメントが肝になるビジネスだ。一つの事業を進める上では、社員が10の国と地域に点在していることの難しさもあるという。

「共通の認識を作ることと、対面で信頼関係を構築していく機会は特に意識している」。葛原氏は子会社の経営者と対話することに時間をかけており、テレビ会議だけでなくフェイスtoフェイスで話をする機会を設けるため、常にアジア中を飛び回っている。他にも、業績を可視化して組織全体に共有をしたり、ヘッドハンティング業界では珍しく研修を導入したりして、組織としての視界感をそろえていく。

また、今年3月には全拠点から社員を集めたキックオフも開催。改めて組織のミッションなどを発信した。そうした工夫を重ねるうちに、子会社の経営者から「世界No.1を目指すということが、言葉だけでなくどんな世界観を目指しているのかがわかった」という言葉もあり、徐々に一つの会社になりつつあるという。

紹介した人材の定着率で、ライバルに勝つ

アジアの市場を攻略する上で、同社が注視しなければならない点がいくつかある。アジアを面で捉えたときの日本との一番の違いは “転職”に対する考え方だ。日本では転職したいひとを探すのが大変だが、アジア、特にシンガポールのような先進国では転職はキャリアアップのために当たり前のように考えられている。実際に一人あたりの転職回数も多い。それゆえ、人材紹介会社は欧米系の大手外資企業も参入しており、シンガポールだけでも競合企業は約3500あるという非常に競争が激しい環境だ。

これに対して葛原氏は、日系企業が得意とする丁寧な仕事による安心できる取引に加えて、リクルートが国内で培ったスピーディーかつ質の高いマッチングノウハウによって差別化を図っていく考えだ。

「人材紹介サービスの質が問われるのは、紹介した人材の定着率。良いマッチングを実現すれば、おのずと定着率は上がる。顧客企業に定着した人材のうち、弊社から紹介できた人材の割合で評価されるようになっていきたい」という。

もう一つは、求人・人材検索サービスなどデジタルプラットフォームとの競争。これについては、「デジタルだけでも動く人というのは一定数いるが、それでは動かない、もしくは動けないひとがいる」(葛原氏)というスタンス。特に、アジアには自分の将来に期待感を抱き、人材紹介会社と直接会って自分の意見を伝えたいという人が多く、また企業も効率よく採用を行いたいことから人材紹介会社の目利きに対するニーズは大きいと話す。

追い風もある。アジアの人材の高度化だ。以前までは日系企業の海外支社における重要なポジションには日本人駐在員が配置されることが多かった。しかし、ここ数年で現地の大学進学率が上昇し、優秀な人材が大量に生まれてきている。

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