携帯ショップで「スマホ販売拒否」多発のなぜ 通信契約の有無で客を差別、揺らぐ「完全分離」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

総務省は2020年12月~2021年2月に大手3社の携帯ショップに対し覆面調査を実施。その結果、ドコモで22.2%、KDDIで29.9%、ソフトバンクで9.3%のショップが通信契約を結ぶ意思のない客へのスマホ端末の販売拒否をしていた。同省はこれを踏まえ、4月16日に開いた有識者会議で各社の担当者を呼び出しヒアリングを行った。

「ショップで販売拒否が起きた理由についてどう考えるか」という質問項目に対し、ドコモは「販売スタッフの理解不足や認識誤りにより発生した」、ソフトバンクは「知識不足により、一部店舗において不適切な案内がなされた」と答えた。KDDIは明確に答えなかった。

代理店関係者「冗談じゃない」

この話を聞いた代理店関係者らは、「冗談じゃない。スマホだけでは売りたくない原因をつくっているのはキャリア(大手3社)側だ」と憤る。

そもそも大手3社が携帯ショップと結んでいる取引条件は、スマホの端末販売だけで利益を出せる構造とはいえない。大手3社の代理店への端末卸値と、3社が決めている事実上の店頭定価は同一で、原価率は100%。KDDIとソフトバンクは端末販売ごとに2千~3千円の販売手数料を出しているが、ドコモに至ってはこれも0円だ。

代理店がその条件下、端末販売の利益を十分確保する道は、「頭金」(店頭支払い金)という形で定価に上乗せした額を客に請求するしかない。

だが、その頭金についてはドコモが昨秋以降、特定の人気機種について「0円」にするよう指示していたことが東洋経済の取材でわかった(詳細は「ドコモ、代理店に『頭金0円強要』で独禁法違反か」)。ソフトバンクではすべての端末で頭金を「0円」にすることを強制しており、大半の店が仕方なく従っている。

この頭金は「料金の一部の先払い」を指す一般的な頭金とは意味が違うため、総務省が呼称を問題視している。だが、大手3社の代理店への卸値と客への販売定価がイコールである以上、呼称の是非はともかくとして、代理店が客に一定額を請求すること自体はやむをえない面がある。

ドコモやソフトバンクが代理店に「頭金0円」での販売を強いるスマホ端末は、通信契約なしで売ればほぼ利益が出ない商品だ。販売手数料が0円のドコモに至っては、対応の手間賃を考えれば実質赤字となる。これが代理店が「販売拒否」に傾く一因となっている。

次ページ在庫を死守したい「切実な理由」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事