「絶対安全」が好きすぎる日本人に伝えたい盲点

ISOやHACCPが世界の主流になった納得の理由

ISOやHACCPが定められた意味を解説します(写真:Mugimaki/PIXTA)
あらゆる製品で「100パーセントの安全」にこだわりがちな日本人。一方で、日本発のリアルタイム組み込み系OSのTRON(トロン)やユビキタスコンピューティングで世界に先駆けた坂村健氏は「絶対安全が存在しないことは、すべての技術系の人間には当然のこと」であり、欧米では「完成品を検査することで基準どおりの仕上がりであることを認証するのでなく、それを作る過程が基準どおりの手順を踏んでいるかを確認し、それにより完成品がある『安全度』に達していると『みなす』という考え方が標準になっている」と言う。
日本ではなぜこうした考え方が浸透しないのか。今後はどういう判断をしていくべきなのか。坂村氏の新著『DXとは何か 意識改革からニューノーマルへ』から一部抜粋・再構成してお届けする。
前回:「技術に土地勘ない人」が絶対知るべきDXの根本

複雑になったシステムに絶対安全は存在しない

前世紀末に多発した何度かの大事故を教訓に、世界の工業標準を定めるISO(国際標準化機構)は1999年のISO/IECガイド51の改訂で、安全について「機能安全」を求めるとした。

その背景には、ある程度以上複雑になったシステムには「絶対安全は存在しない」という考え方がある。「絶対安全」の建前を明確に捨てることが、社会をより安全に近づけるために重要とわかったからだ。

日本人は大前提としての「100パーセントの安全」という状態がまずあり、それが何らかの「あってはならない」原因で毀損されて「危険になる」と考える癖が抜けない。

それに対して「機能安全」とは、一言でいえば、システムに100パーセントの安全を求めない――そもそも求めることができないという考え方だ。安全も速「度」や精「度」と同じように、「機能」として実装し、安全「度」で語るべきスペックのひとつだということだ。

実は絶対安全が存在しないことは、すべての技術系の人間には当然のことである。コンピュータのプログラムでも、いかに気をつけて対策を講じ、チェックを繰り返しても、ある程度以上のシステムでは、必ずバグ(プログラムの間違い)が存在する。むしろ、それを見越して打たれ強いシステムを作るべきというのが現代のやり方だ。しかし、それは社会のコンセンサスにはなっていなかった。

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