幽霊会員の「フィットネス離れ」が起こす大問題 ビジネスモデルそのものが課題に直面している

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コロナ前の水準にまで業績を立て直すには、会員の新規獲得や離脱を防ぐことがカギになるが、長年続いてきたビジネスモデルを転換するのもなかなか難しい。

フィットネスクラブ業界では、都度払いのサービスは一般的でなく、各社は月会費で着実に売り上げを立ててきた。エニタイムフィットネスを運営するファストフィットネスジャパンの土屋敦之社長は、「業界ではこれまで、月会費でないと収益を取れないという結論にたどり着いており、ビジネスモデルを変えようがない。会員数を戻すのが本来の道だが、幽霊会員の恩恵がなくなる中で難しく、コスト削減もやりきっている感がある」と語る。いつでも行ける都度払いだと結局通わなくなることも多く、安定的な売り上げを確保するのは難しいのが現状だ。

月会費を見直す取り組みも

それでも、会員の月会費への依存度の高さを見直す取り組みも徐々に始まっている。ルネサンスの吉田智宣スポーツクラブ事業本部長は、「柱は従来通り会員ビジネスだが、コロナ禍のような事態が起きたときに沈まないため、会員以外の売り上げ確保とコスト削減を進める」と話す。

店舗に来られない人に向けたオンラインレッスンなどによる売り上げや、自治体から受託する高齢者の運動教室事業など、会費以外の売り上げが占める割合を増やしていく算段だ。

実際にセントラルスポーツでは、2020年夏より、人気インストラクターのレッスンをオンライン配信することで、人気授業を地方店舗でも受講できる取り組みも始めた。当初は約10店舗で開始したが、2021年春の時点で対象店舗は約100店にまで拡大しており、今年の夏には約150店で展開予定だ。

「経費はできるだけ今の形を維持しながら、今は痩せ細っている収入を徐々に膨らませたい。コロナ禍で今までフィットネスクラブに通っていなかった人が運動の価値に気付いたので、時間がかかったとしても客数は徐々に元に戻る」(髙根シニアマネージャー)と、強気の姿勢を見せる。とはいえ、こうした事業の規模感はまだ非常に小さく、リスク分散に寄与するほど成長させられるかは未知数だ。

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